ロケット砲が「高機動」をうたうワケ 活用広がる米「HIMARS」と日本の島しょ防衛問題

HIMARSはどう運用されている?

 2000年代はじめからアメリカ軍で運用が開始されたHIMARSは、イラクやアフガニスタン、最近ではシリアなどにおいてテロリストの拠点に対する攻撃を行うなど、これまでは主として対テロ戦争を戦い抜いてきました。

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輸送艦「アンカレッジ」甲板にてロケット弾を発射する「HIMARS」(画像:アメリカ海軍)。

 しかし現在では、ロシアや中国の台頭を受けてその運用にも変化があらわれてきています。たとえば、2017年10月にアメリカのカリフォルニア州沖で実施されたアメリカ海軍と海兵隊の合同演習である「ドーンブリッツ」では、輸送艦「アンカレッジ」の飛行甲板上から海兵隊のHIMARSがロケット弾を発射し、約70km先の地上標的に見事命中しました。HIMARSが海上の船舶からロケット弾を発射したのはこれが初めてです。

 実は、これは非常に画期的な出来事だったと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は感じます。近年アメリカ海軍や海兵隊が敵地に上陸作戦を行う環境は、先進的な防空システムや地対艦ミサイルの出現によって危険度が増しています。そこで、遠く離れた海上からHIMARSによってこれらの脅威を排除すれば、敵地へ安全に上陸部隊を送り込むことができます。

 また、遠く離れた場所にいるこうした脅威を発見するために、海兵隊が導入した最新鋭のステルス戦闘機F-35Bを使用することも考えられます。F-35Bは優れたステルス性能(敵のレーダーなどに発見されにくくなる能力)をほこり、かつ搭載する最新鋭のセンサーで敵の現在位置を正確に把握することができます。つまり、F-35Bが発見した目標の位置をHIMARSに伝え、その目標をHIMARSが攻撃するという連携プレーも考えられます。

 もちろん、HIMARSを発射する際には飛行甲板でヘリコプターなどを運用することはできなくなりますが、それと引き換えてもあまりある成果を期待できるでしょう。

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コメント

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1件のコメント

  1. 現代においては近接戦闘に突入した時点で泥沼と察すべし