ロケット砲が「高機動」をうたうワケ 活用広がる米「HIMARS」と日本の島しょ防衛問題

将来のHIMARSはフネを狙う

 これまで見てきたように、HIMARSは基本的に地上目標を攻撃するための兵器でした。しかし、これからは地上目標のみならず海上に浮かぶ敵艦船を攻撃する兵器になる可能性も出てきています。

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対艦ミサイル導入計画のある「HIMARS」。実現すれば、日本の島しょ防衛においても、その存在感を増すことになると見られる(画像:アメリカ国防総省)

 現在アメリカ陸軍と海兵隊は、中国の海洋進出などを念頭に海上にいる敵艦艇を陸地から攻撃するための対艦ミサイル導入を計画しています。その導入計画の有力候補として、HIMARSでも運用可能なATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)を改修して対艦ミサイルに転用することが計画されています。

 従来ATACMSは、最大で約300km離れた場所にいる敵を攻撃することが可能な誘導兵器として運用されてきました。このATACMSの先端部分に敵艦船を探して誘導するためのセンサー(シーカー)を組み込むなどの改修を行うことで、これを対艦ミサイルに転用しようというわけです。この計画はアメリカ海兵隊にとっては特に重要で、ATACMSを対艦ミサイルとして運用すれば既存のHIMARSを即座に発射機として活用することができることから、新しく発射車両を購入したり、それを運用するための人員を育成したりする費用と手間が省けます。海兵隊は決して予算が潤沢な組織ではありません。そのためこうした節約術は組織にとっての死活問題なのです。

 中国の海洋進出を念頭においたこの対艦ミサイル導入計画は、同じく中国の脅威に直面している日本にとっても他人事ではありません。もし計画が無事完了すれば、有事に際して日本の島しょ部などに対艦ミサイルを搭載したHIMARSが展開することになるかもしれません。

【了】

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コメント

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1件のコメント

  1. 現代においては近接戦闘に突入した時点で泥沼と察すべし