ロケット砲が「高機動」をうたうワケ 活用広がる米「HIMARS」と日本の島しょ防衛問題

航空演習に参加した意味は…?

 さらに、海からだけではなく空からの展開にも変化が表れてきています。

 2018年5月にアメリカのアラスカ州で実施された多国間演習「レッドフラッグアラスカ」では、アメリカ空軍のC-17輸送機によって陸軍のHIMARS 2両が運び込まれ、射撃地点に移動して実際にロケット弾の射撃を行った後に再びC-17によって撤収するという訓練が行われました。「レッドフラッグアラスカ」は各国の空軍や海軍の戦闘機部隊などが参加し、主に空中戦の技術をみがく演習です。そこにHIMARSが参加した意味とは一体何でしょうか。

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「レッドフラッグアラスカ」へ参加するため、C-17「グローブマスターIII」輸送機へ積み込まれる「HIMARS」(画像:アメリカ空軍)。

 実は、これまでHIMARSの射撃を行う際には上空に航空機を飛ばさないなど徹底した安全管理が行われてきました。しかし、この「レッドフラッグアラスカ」では上空に戦闘機などが飛行するなかで射撃が行われました。また、HIMARSがC-17で運ばれ、射撃を行い、再びC-17で撤収するまでのあいだ、上空の味方戦闘機などがC-17やHIMARSを援護していたことも明らかにされています。つまり、「レッドフラッグアラスカ」にHIMARSが参加したのは、陸にいる部隊と空を飛ぶ部隊が緊密に連携し、敵の脅威がある環境でもHIMARSを安全に展開する能力があることを示したかったのではないかと思われます。すなわち、敵の戦闘機などを味方戦闘機が排除し、そこにC-17がHAIMARSを運び込んで奥地にある空軍基地などの敵施設を攻撃し、それを上空の味方戦闘機が援護する、という具合です。

 上にあげた例からも分かるように、現在アメリカ軍はHIMARSを従来の対テロ戦争から今後想定される国家間戦争へ対応可能なようにその運用をシフトしているものと思われます。

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コメント

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1件のコメント

  1. 現代においては近接戦闘に突入した時点で泥沼と察すべし