わずか1.4度でも「きつい坂」 上り下りが苦手な鉄道の苦労と工夫

上りも大変だけど、下りも大変

 鉄道は、坂を上るのに苦労しますが、下りにも神経を使います。

 坂を下るときに何かが起きても確実に止まれなくてはならないため、急勾配を走る車両にはブレーキを何重にも施したり、下り勾配で車輪やブレーキが摩擦熱で過熱しないよう、ブレーキの材質やシステムを工夫したりしています。

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最大50‰(約2.9度)の勾配がある神戸電鉄では、下り勾配での暴走を防ぐために特別な電気ブレーキを装備している(児山 計撮影)。

 たとえば六甲山の急勾配を走る神戸電鉄では、万が一の事態にも備えて「非常電制」という強力な非常用電気ブレーキを装備しています。箱根登山鉄道ではカーボランダム(炭化ケイ素)という化合物でできた部品をレールに押し付けて大きな摩擦力で車両を止める仕組みのブレーキを備えています。

 また、下り勾配ではブレーキの利きも平坦線に比べて悪くなるため、最高速度も制限されます。たとえば近鉄大阪線の青山峠では、上り勾配(大阪方面)では電車のパワーにものを言わせて一部列車は最高130km/hまで出しますが、下るとき(名古屋、伊勢方面)はブレーキ距離の関係から、最高速度は105km/hに制限されています。

 上り坂よりも下り坂の方がスピードを出せない、そんな現象も坂道に弱い鉄道の事情といえそうです。

【了】

※誤字を修正しました(9月23日0時20分)。

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Writer: 児山 計(鉄道ライター)

出版社勤務を経てフリーのライター、編集者に。教育・ゲーム・趣味などの執筆を経て、現在は鉄道・模型・玩具系の記事を中心に執筆。鉄道は車両のメカニズムと座席が興味の中心。座席に座る前に巻尺を当てて寸法をとるのが習慣。言うなれば「メカ&座席鉄」。

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コメント

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3件のコメント

  1. 土地によっては軸重制限があったりで全てに動輪を配置できない車種は車も同じでしょうかね?
    鉄道の軸重分布は精度が高いと思いますが、自動車の世界はアホな分布公式が蔓延していて嘆かわしいかぎりです。
    ですから出荷された実物が書面通りか?否か?などは国が民間に丸投げした完成検査のイカサマと世を走る車が車検証通りでないことで明白になってますよね
    安定傾斜角度が許容内に収まってるはずの緊急自動車が横転してみたり、これらは全て製造完成車の段階で実測検査をせずに計算上の数値を提出して合格に導いてるだけの堕落と、法人検査の手間を省くために事前に提出された書類審査当で後の本検査を通してしまう双方の堕落の負の賜物なんですね。
    でも交通の現場は嘘はつかないので如何に生きてる人間に過失を押し付けようが真実は頭をもたげてくるのですが、相変わらず臭いものに蓋ですから悲しいかぎりです。
    夜を徹しての保安検査、鉄は生き物と言い切る職の拘りに物の進化が加わればこそ鉄道に限らず安全な乗り物と言えるでしょうね
    また鉄道が勾配における粘着運転と同時にリニア式や回生ブレーキを取り入れていく中で、今はアホな代替え需要におんぶにダッコの車の世界もそろそろ現実見ていかないとローンその他で焦げ付いちゃうんじゃないでしょうかね?

  2. 都電では天候や道路の条件により砂を撒いてたはずです
    砂撒き器も付いています

  3. 昔パーミルをよくわかってなかった頃は、碓氷峠の66.7パーミルの勾配がすごいすごいと言われていたのを、そのまま「そんなにすごい坂があるのか」と思っていたものですが、パーミルを千分率と知り、1000m先で66.7m上がっていると聞くとすごいけど1m(1000mm)先で約7cm(66.7mm)上がっているだけだと気づいたとき、案外大した事ないんだなと思ったのと同時に、その程度でも鉄道にとっては急坂なんだと驚いたのを思い出しました。