潜水艦、原子力と通常動力でどう違う? 差異で明らか、日本に原潜が不要な理由

音が頼りの水中戦で「無音」であるということ

 対する通常動力潜水艦は、原子力潜水艦が不得意とする静粛性に優れています。なぜならば、ディーゼル機関を止めてバッテリー駆動に切り替えることによって、艦内で発生させる音をほぼ皆無にすることができるからです。この場合、唯一の音の発生源は乗員の発する音なので、例えば海上自衛隊の潜水艦の艦内には多くの場所に絨毯が敷かれ、艦内を歩く隊員の足音すら発生させないような工夫が施されています。

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航行中の海上自衛隊そうりゅう型通常動力潜水艦(矢作真弓撮影)。

 海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦には、新たに「AIP(非大気依存推進)機関」が搭載されました。これは簡単にいうと、ヘリウムガスを加熱、冷却して得られる体積の変化を利用し動力を得るという装置です。これにより、従来のバッテリー駆動と比べて潜航時間が延びたといいます。

 ただし、このAIP機関はあくまでもディーゼル機関の補助装置なので、AIP機関をメインにずっと行動し続けることはありません。ではどのような時に使うのでしょうか。それは、海底深くに身を潜めている時です。

 海上自衛隊は、敵性潜水艦の行動を探知するべく、日本の近海に潜んでいます。もし、敵性潜水艦が近づいてきた場合、ディーゼル機関を停止させて、補助動力装置に切り替えます。ここで海上自衛隊の潜水艦は、ほぼ無音状態になります。視界も電波もさえぎられる水中、敵は音を探知しながら進んできますが、音を発しないこちらの姿を探知することは、ほとんどできないと言います。まるで、ニンジャの様にその姿を隠すことができるのが、通常動力潜水艦艦の強みです。

 専守防衛を掲げる日本の場合、原子力潜水艦よりも通常動力潜水艦の方が圧倒的に有利に戦うことができるのです。

【了】

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コメント

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15件のコメント

  1. シーレーン防衛に原潜は不要なのか?

    • 日本に原潜は不要、少なくともSLBMを持たない限りは。
      攻撃型であればそうりゅう型の拡充と発展に費用をつぎ込む方が空母より役に立つ

  2. 間違いが二つあります。
    1.静粛性 原潜はエネルギー無限なので大型化も許容でき、静粛性対策にスペースと重量を割く事が可能で最新の原潜は必ずしも通常潜より騒音が大きいとは限りません。シュノーケルでディーゼル回さねばならない弱点もあります。
    2.敵を探知するソナーには大電力を要します。原子力発電所を背負ってる原潜は電力を気にしませんが、電力に限りある通常潜は原潜よりソナーが劣りますので敵の発見が遅れます。
    遠距離進出しないからと言って原潜不要ではありません

  3. 従来の待ち伏せ作戦なら、敵もそこに(位置特定は出来ないが)海自が居ることは判って居るので、そういう中では特に秘匿性が重要で、逆に水中速度は必要ではない。だから通常型が良い。
    但し、FOIP戦略に基づき南シナ海でのパトロールや攻撃を任務にするなら、やはり原潜が有利な面も多い。

  4. 原子炉は止められないが、高圧ダービーを止め低圧タービンに切り替えれば静粛性は保たれ、炉心冷却水は維持できる。過剰な蒸気は復水器を使えば良いだけの話。通常型エンジンも今はガスタービン型で、停止しても暫くは冷却が必要な筈。

  5. 元自ですが、自衛隊の潜水艦乗りの中でも、原潜必要論はものすごく強いですよ。

    要らないから作らない、は間違いです。
    非核三原則と専守防衛が仇となって作るハードルが高いんです。

    原潜の方が静粛性が劣るなんていつの時代の話ですか。
    速力が使えないよりも、使えた方がいいのは当たり前です。進出だったり回避の選択肢が増えるんですからね。

    軽々しく「必要ない」と言っていますが、それは乗員が血の滲むような努力をしているからです。
    スノーケルもそう。
    サブマリナーにとって見つかるのは死を意味します。敵だろうと味方だろうと、平時だろうと有事だろうと。

  6. 足音を発生させないように絨毯を敷いているとあるけど、そんな音すら拾えるという事なのですか?
    それとも水中だとよく響くみたいな事があるのでしょうか?

  7. 静穏性が必要なのはよく分るが静止したときの音などすぐに消せるだろう。マイクで録音して逆位相の音波を発すればよい。AIが発達すれば蒸気タービンの音にも遅延なく追随できると思うから音は近い将来問題ではなくなる。それよりも潜水艦の発する熱のほうが問題である。多分熱源は消せないと思う。それに潜水艦は無人になるらしいから電池駆動でもよいと思うが、原子力を動力とする潜水艦はミサイル魚雷から逃れるためにも必要と思う。また、乗組員の居住性確保のためには必須である。

    • 「逆位相の音波」は素晴らしいアイディアですが、きれいに音が消せる場所が限られます。特定の方角や距離にいる敵にしか有効ではないらしいですね。東大航空学科の加藤寛一郎さんが以前、やはり逆位相を使ってヘリの音を消す装置を小説中に登場させたのですが、原理的に特定の方角にしか効かないそうです。

  8. スマホの時代にガラパゴス携帯を必死に進化させているように思えて虚しい。
    原潜が作れるのに何故自らに手鎖を掛けたがるのか?
    きっと〇〇◯に悪い夢を見続けさせられているのだろう。

    • ◯んこ?

  9. 潜水艦の静粛性を保つ大事な要素の一つは待ち伏せ攻撃できるかどうかです。
    そのためには敵艦隊に先回りする必要がある訳ですが、通常動力型では最新型でも高々20ノット程度で蓄電残量を気にしながら行動しないとならないのに対し、原潜なら燃料気にせず30ノットオーバーが出せます。結果として打ち漏らしが出やすいのです。中国の空母打撃群が仕掛けてくるときは当然急展開してくるでしょうから、余程いい位置に予め配置できてないと後追いするだけになってしまいますし、更にそういう状況になると概して発見されやすいです。

  10. まぁ4年前の記事なので・・・1年前まで位のデータです
    726型(オハイオ) US 原潜 85db
    シーウルフ型 US 原潜 94db
    そうりゅう型 JP ディーゼル潜 95db
    ヴァージニア型 US 原潜 95db
    ボレイ型 RU 原潜 100db
    214型 GE ディーゼル潜 100db
    キロ型 RU ディーゼル潜 105db
    688型(ロス)後期型 US 原潜 105db
    アクラ型 RU 原潜 110db
    093A型 CN 原潜 110db
    688型中期型 US 原潜 110db
    094型 CN 原潜 120db
    688型前期型 US 原潜 125db
    091型後期型 CN 原潜 140db
    091型初期型 CN 原潜 160db

  11. >「(AIPは)どのような時に使うのでしょうか。それは、海底深くに身を潜めている時です。海上自衛隊は、敵性潜水艦の行動を探知するべく、日本の近海に潜んでいます。もし、敵性潜水艦が近づいてきた場合、ディーゼル機関を停止させて、補助動力装置に切り替えます」。
     この記述は矛盾だらけでは。「海底深くに身を潜めている時」にディーゼル機関を使っているように読めますが、それはあり得ないことです。
     ディーゼル機関は「深く」潜航中には使えません。潜航中は基本的に、AIPよりさらに静かな電動機を使っています。ディーゼルを使うのは浮上中か、或いは海面すれすれまで深度を上げてシュノーケルを海面に出し、充電をしている時です。この「軍事フォトライター」さん、どの程度潜水艦の知識をお持ちなのでしょう…。

  12. 日本は核戦力を保持すべきであって、そのキャリアーとして、原潜が最適だ。
    早急に装備してほしい。