機関車が引っ張る旅客列車、なぜ減った 貨物はいまも機関車メイン

機関車けん引が最適な貨物の事情

 ひとつ目のメリットは、路線の仕様に応じた動力で直通運転できることです。たとえば電化区間から非電化区間に直通する場合、先頭の機関車を電気機関車からディーゼル機関車に交換するだけで走れます。電車だと非電化区間に直通できません。ディーゼルカーなら直通できますが、電化区間を走るときも電気を供給する施設を使わないため、せっかく整備した施設が無駄になってしまいます。

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かつての寝台特急「北斗星」。電化区間は電気機関車(右)、非電化区間はディーゼル機関車(左)に交換して上野~札幌間を直通していた(2003年5月、草町義和撮影)。

 貨物は「自分の意思」で列車を乗り換えることがないため、直通運転の必要性は旅客列車より高いといえます。そのため、貨物列車は電車やディーゼルカーより機関車けん引方式の方が運転しやすいのです。

 ふたつ目は「条件付き」で車両のコストが安いこと。機関車はともかく、客車や貨車は動力装置が付いていませんから、編成に組み込まれる車両の数が増えれば増えるほど、電車やディーゼルカーより安く製造できます。貨物列車は長い編成を組んで一度に大量の貨物を運ぶことが多いため、このメリットが生きてくるのです。このほか、動力装置が機関車にしかないため、その点検や修繕にかかる手間も減らせます。

 もちろん、機関車けん引の貨物列車は電車やディーゼルカーに比べて速度が遅くなりやすいといったデメリットもあります。ただ、貨物列車を利用する人や企業(荷主)の多くは、旅客列車ほどには所要時間を気にしていないこともあり、速度がある程度遅くても問題になりません。こうしたことも、貨物列車が機関車けん引方式を採用している理由のひとつになっているといえます。

 ちなみに、JR貨物が東京貨物ターミナル駅から安治川口駅(大阪市此花区)まで運転している貨物列車のなかには、機関車方式ではなく電車方式のものもあります。東京~大阪間は国内でもとくに交通需要が大きく、トラック輸送との競争も激しいため、高速運転できる電車を導入したといえるでしょう。

【了】

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コメント

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4件のコメント

  1. 黒部峡谷鉄道は?

    • 黒部峡谷鉄道は冬の間運休しますよォ

  2. >貨物列車を利用する人や企業(荷主)の多くは、旅客列車ほどには所要時間を気にしていない

    そう決めてかかっても良いのだろうか、荷主とて迅速性のアップは嬉しいんじゃないかなあ。

  3. 動力分散の方で加減速にふれてるから、動力集中の貨物列車の方でも各駅停車でないから加減速の機会が少ない事にもふれておくと、より良い記事になると思う。(貨物列車に阪神ジェットカーの性能は不要ということ)