動けなくなった戦車への対処とは 戦場なら爆破もアリ 平時なら回収…どう回収?(写真12枚)

戦車の「回収車」、もとは同じ戦車

 自衛隊における戦車の「回収車」とは、回収する対象の戦車と同じ車体を流用して製造されています。なぜならば戦車が動けなくなるのは、平地以外の場所が多く、そして履帯が外れた時などだからです。そうなった場合、たとえば約50tある戦車を引っ張るのに、平地でなおかつ摩擦抵抗が弱い状態であれば、50tより少ないパワーでも引っ張ることができますが、沼地に沈んでいたり、履帯が外れたりして転がり抵抗が大きい場合には、その重量とほぼ同じ力、もしくはそれ以上の力を加えないと戦車は動きません。

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10式戦車の車体を流用した11式装軌回収車(矢作真弓撮影)。

 これらの条件を満たすもっとも手近なものはその戦車自身というわけで、ゆえに回収車は戦車の車体を流用しているのです。これには、新規開発に係る研究費などの費用を抑制するという効果もあります。

 この回収車は、意外な場面で見つけることができます。たとえば、戦車が登場する一般公開イベントなどでは、会場の隅で目立たないように待機している姿を見ることができるほか、イベントの内容で「戦車回収」という項目があって、戦車を回収する様子を紹介してくれる時もあります。ごく稀ですが、実際に履帯が外れて、動けなくなった戦車が回収されていく場面を見ることもあります。

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中央記念日(観閲式)の会場の隅で待機する90式戦車回収車(矢作真弓撮影)。
動けなくなった戦車を回収するために走る90式戦車回収車(矢作真弓撮影)。
右から90式戦車回収車、履帯の外れた10式戦車、外れた10式戦車の履帯(矢作真弓撮影)。

 非常に地味で、目立たない存在の「回収車」ですが、戦車の乗員たちからすれば、彼らがいるからこそ、安心して動くことができる。つまり「心の拠り所」的な存在として一目置かれているのです。

【了】

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コメント

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2件のコメント

  1. 戦車回収車は戦車と建機のかっこよさを兼ね備えた燃えの極みです。
    が、あんまり展示されないのが残念です。
    火力演習などで、牽引を披露すべきと思うんですがね…

  2. >たとえば第二次世界大戦において、米軍のM4シャーマン戦車を鹵獲した日本軍が、要塞と化した硫黄島にこのM4戦車の砲塔を砲台として設置して、米軍と戦ったことがあります。ドイツ軍も、M4戦車を鹵獲してアフリカ戦線などに投入するなどしています。

    この件初耳です、どっかにソースあるのかしら?