東京の環状道路「環八」「環七」の下に環状地下鉄構想 そのメリットと課題は

使わない人も便利になる

 実際にこの路線が開業すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。まず考えられるのが、郊外から別の郊外への移動時間の短縮です。

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赤羽~葛西臨海公園間の「メトロセブン」は環七の地下を通る。写真は東京メトロ東西線・葛西駅付近の環七(2018年6月、草町義和撮影)。

 複数の路線から都心から放射状に伸びている現在の鉄道ネットワークは、郊外から都心へ通勤するのには便利です。しかし、郊外から別の地域の郊外に向かう場合、いったん都心に出る必要があり、時間がかかってしまいます。

 たとえば、東急東横線の田園調布駅(大田区)から西武新宿線の井荻駅(杉並区)に向かうとします。鉄道を使うルートは東急東横線~JR山手線~西武新宿線の23.0km。直線ルート(約15km)の1.5倍強という長さで、所要時間も平日日中で約50分かかります。また、少なくとも渋谷と高田馬場の2駅で乗り換えなければなりません。

 これがエイトライナーなら、途中の乗り換えが不要。距離と時間も短縮されます。田園調布~井荻間の場合、直線距離より少し長い程度(約17km)になりそうですから、所要時間は10~20分くらい短縮されると思われます。

 メリットがあるのはエイトライナーやメトロセブンの利用者だけではありません。郊外から都心にいったん入って別の郊外に向かう人がエイトライナーやメトロセブンの利用に切り替えれば、都心に向かう路線の利用者が減ります。これにより混雑が緩和されますから、エイトライナーやメトロセブンを使わない人にもメリットがあるのです。

 ただ、こうしたメリットはあるものの課題も山積しており、すぐに実現する可能性はひじょうに低いといえます。国土交通大臣の諮問機関・交通政策審議会も、2016年4月に答申した「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」で「(エイトライナーとメトロセブンは)事業性に課題がある」と記しており、早期の実現は困難だろうという見方を示しています。

 その最大の理由は「お金」。距離が比較的長い路線ということもあり、建設費は約1兆円かかるとされています。その一方で想定される利用者数は必ずしも多いとはいえません。郊外から都心に移動する人に比べ、郊外から別の郊外へ移動する人はそれほど多くないためです。

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コメント

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7件のコメント

  1. オリンピック関連費用より安いな。

  2. 事業主体はどこを想定しているのかしら

  3. 郊外から郊外のアクセス利用が少ないと言うなら、わざわざ鉄道を作らなくても、路線バスで十分だろう。
    そんなのにお金使う前に、運転士の待遇改善にお金使うべきだろう。

  4. イーロン・マスクThe Boring Companyの「The Loop」システムの柔軟性と低コスト性は、この路線には非常に適しているようです。

  5. 道路整備の予算を若干でも鉄道整備に振り分けたり、鉄道も道路のように社会的便益で価値を評価するようにすればもっと早く建設できるだろうし、廃止になる路線もかなり減らせただろうに。

    1兆円掛けてでも造る価値はある路線だと思う。通勤混雑の間接的な緩和の観点からも。他者路線と直通しないのであれば 鉄輪式リニアでも いいのでは。

    同時に、「東武野田線・JR川越線・八高線・横浜線及び相模線 も首都圏を広範囲に囲む環状線」として位置づけ、何らかの改良を取ると尚良いです。

  6. 全線地下鉄 でなくても LRTが併用軌道(併用軌道内最高速度を時速50km以上に緩和すべきだと思うが)を走ったり専用軌道を走ったり 必要に応じて地下区間を走る方式で造る。 そして、そのLRT網を拡大していく 

    という方法でも良いのでは?「地下鉄」だけにこだわらず、地下鉄以外の鉄軌道方式でも良いと思う。

    都市を囲む 環状鉄道 は他の地方都市でも実現してほしいしそのための制度改正を。

  7. 丸ノ内線の荻窪から延長する形で整備したら回遊性も増すし、蒲蒲線のサイズの問題の解消(大師橋から京急に乗り入れる。車両の規格は京急=丸の内線。乗り入れ区間には第三軌条を新設。当該区間はホームドアが設置されており、軌道内の安全も確保されている。)にもつながる。