東京の環状道路「環八」「環七」の下に環状地下鉄構想 そのメリットと課題は

建設費だけではない「利便性」の課題

 そのため最近は「スマート・リニアメトロ」方式で建設することも検討されています。これは都営大江戸線などに導入された小型のリニアモーター地下鉄(リニアメトロ)を改良し、さらに小型化するもの。これによりトンネルを小さくするなどして建設費を抑えようというわけです。しかし、この方式を採用しても建設費は約9000億円かかるといわれています。

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スマート・リニアメトロを導入すると東急多摩川線への直通運転は不可能になる(2014年8月、草町義和撮影)。

 また、スマート・リニアメトロは東急多摩川線の規格や仕様と異なるため、直通運転は不可能です。たとえば田園調布駅ではエイトライナーのホームを可能な限り東急多摩川線のホームの近くに建設するなど、乗り換え時間の短縮を図る必要があるでしょう。

 田園調布駅のほかにも、ほかの鉄道路線の駅との連絡が不便にならないよう、最大限に考慮する必要があるでしょう。乗り換えに時間がかかるようなら、全体の所要時間は都心にいったん出るルートと大して変わらなくなる可能性もあります。これではエイトライナーとメトロセブンを建設する意味が薄れてしまいます。

 ただ、環八、環七と交差している鉄道路線は、必ずしも交差する部分に駅を設けているわけではありません。たとえば環七通り(メトロセブン)と総武本線は、総武本線の新小岩駅から約1.5km、小岩駅から約1.2kmの地点で交差していますが、交差地点に総武本線の駅はありません。

 このような場合、メトロセブンを新小岩駅か小岩駅に迂回(うかい)させるか、あるいは交差地点に総武本線の新駅も整備しなければ、実質的には乗り換えできません。しかし、距離が長くなる迂回ルートは建設費を高くしてしまいますし、総武本線に新駅を設けるなら同線を運営するJR東日本の協力も必要です。

 このように、全体の建設費がひじょうに高くなる一方、安くしようとすれば利便性が低下する可能性があるというジレンマを抱えています。コストを抑えた場合はどの部分が不便になり、逆に便利にした場合はどのくらいのお金が追加で必要になるのかなど、さまざまなケースを想定した検討が今後も続けられることになるでしょう。

【了】

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コメント

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7件のコメント

  1. オリンピック関連費用より安いな。

  2. 事業主体はどこを想定しているのかしら

  3. 郊外から郊外のアクセス利用が少ないと言うなら、わざわざ鉄道を作らなくても、路線バスで十分だろう。
    そんなのにお金使う前に、運転士の待遇改善にお金使うべきだろう。

  4. イーロン・マスクThe Boring Companyの「The Loop」システムの柔軟性と低コスト性は、この路線には非常に適しているようです。

  5. 道路整備の予算を若干でも鉄道整備に振り分けたり、鉄道も道路のように社会的便益で価値を評価するようにすればもっと早く建設できるだろうし、廃止になる路線もかなり減らせただろうに。

    1兆円掛けてでも造る価値はある路線だと思う。通勤混雑の間接的な緩和の観点からも。他者路線と直通しないのであれば 鉄輪式リニアでも いいのでは。

    同時に、「東武野田線・JR川越線・八高線・横浜線及び相模線 も首都圏を広範囲に囲む環状線」として位置づけ、何らかの改良を取ると尚良いです。

  6. 全線地下鉄 でなくても LRTが併用軌道(併用軌道内最高速度を時速50km以上に緩和すべきだと思うが)を走ったり専用軌道を走ったり 必要に応じて地下区間を走る方式で造る。 そして、そのLRT網を拡大していく 

    という方法でも良いのでは?「地下鉄」だけにこだわらず、地下鉄以外の鉄軌道方式でも良いと思う。

    都市を囲む 環状鉄道 は他の地方都市でも実現してほしいしそのための制度改正を。

  7. 丸ノ内線の荻窪から延長する形で整備したら回遊性も増すし、蒲蒲線のサイズの問題の解消(大師橋から京急に乗り入れる。車両の規格は京急=丸の内線。乗り入れ区間には第三軌条を新設。当該区間はホームドアが設置されており、軌道内の安全も確保されている。)にもつながる。