車輪と履帯の「ハーフトラック」が消えたワケ 良いとこどりのはずがなぜハンパに?(写真10枚)

でもやっぱり中途半端だった

 戦場で使われたハーフトラックは、車体に防弾装甲を施し大砲や機銃を装備した装甲車から輸送用トラックまで、あらゆる任務に使われましたが、よく見ると履帯の構造はごく簡単なゴム製の物からまるで戦車のように複雑なものまであり、方向転換する方式もみな同じというわけではありませんでした。前出のM3ハーフトラックとSd.Kfz.251の外見を比較しても構造がまったく違っているのが分かります。

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アメリカ軍のM3ハーフトラック(月刊PANZER編集部撮影)。
ドイツ軍のSd.Kfz.251装甲兵員輸送車(月刊PANZER編集部撮影)。
イギリス軍のランドローバー改造ハーフトラック(月刊PANZER編集部撮影)。

 装輪車は前輪のステアリングを切ることで方向転換をしますが、装軌車は左右の履帯の回転数を変えることで方向転換を行いますので、トランスミッションの構造は装軌車のほうが複雑になります。一方ハーフトラックは装輪車と同じように前輪のステアリングのみで行うもの(アメリカのM3ハーフトラックなど)と前輪のステアリングに合わせて、装軌車のように左右履帯の回転数を変える構造(ドイツのSd.Kfz.251など)の2種類がありました。走行性能は当然後者の方が優れていましたが、トランスミッションの構造は装軌車と同じで複雑なものになり、生産やメンテナンスが簡単にできるというハーフトラックのメリットが無くなってしまいます。「中途半端でちょうど良く」とは結構難しいものです。

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ソ連が1965年に試作したハーフトラック、オブイェークト19(月刊PANZER編集部撮影)。

 第二次大戦で活躍したハーフトラックは戦後も使われ、さらなる開発研究もしばらく続きます。しかしこのあいだにエンジンとトランスミッションの性能は大きく向上し、装軌車は走行性能も信頼性も格段に向上しました。今度はハーフトラックが悪路では装軌車についていけなくなり、道路では装輪車にも追いつけなくなってしまいます。用途に応じてはっきりと装軌車か装輪車が使い分けられるようになり、こうして、登場した時にはいいとこ取りだったハーフトラックも、最後は「ただの中途半端」なクルマになってしまい軍用車は消えてしまいました。ただ民生用として森林作業車や雪上車として特殊な環境ではまだ見ることができます。

【了】

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