2列シートの豪華夜行バスが普及しないワケ やはり「安さ」一番? 引退する車両も(写真28枚)

リピーターもあるものの… 2列シートのメリット・デメリット

 では、豪華2列シート車を導入することによるメリットとデメリットについて考えてみます。

 最大のメリットは、やはり「周りを気にせずに休める」「プライベート空間を確保できる」という点に尽きます。利用者のなかには、その豪華さと快適さに満足して、リピーターになる人もいるほどです。また、バス事業者にとっても、フラッグシップ車として運行することになるため、会社のPRにもなるほか、同じ区間で3列シート便や格安4列シート便を運行している事業者にとっては、そちらへの集客効果も見込めます。

 一方でデメリットは、格安4列シートや3列シートと比較して運賃設定が割高であることです。なかには、新幹線+宿泊費の合計金額とほぼ同程度、もしくはこれよりも高い金額に設定されている路線もあり、一般的に高速バス利用者の多くが「安さ」を求める傾向のなか、利用客の立場からすると、乗りたくてもなかなか手を出しにくいというのが実状です。

 また、バス事業者にとっても、「車両価格が高い」「付帯サービスの提供にもそれなりの費用が発生する」といった初期投資・コスト面でのデメリットがあるほか、運賃設定のバランスが難しい(安すぎるとすぐに座席が埋まってしまう反面プレミアム感が薄れる、逆に高すぎると利用客に敬遠されて座席が埋まりにくい)、座席数が少ないために採算ラインを高く設定せざるを得ないといった問題もあるといえましょう。

 さらに近年では、バスの車体自体の車両価格が上昇しており、導入コストが上がっているほか、複数グレードのシートを設定することで採算ラインにのせることが可能であった2階建てバスの車両代替が、国産2階建てバス(三菱エアロキング)の製造中止により事実上できなくなっています。

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後方6席を日本初の2列シートとした弘南バス「ノクターン号」スーパーシート車。写真はスーパーシート車としては2代目で、液晶テレビが廃止されている(須田浩司撮影)。
西日本鉄道が運行する新宿~福岡間夜行バス「はかた号」。前方4席が個室タイプの「プレミアムシート」になっている(須田浩司撮影)。
現在の西日本ジェイアールバス「プレミアムドリーム号」。2010年に導入された車両で、1階のプレミアムシートはわずか3席しかなく、人気も高い(須田浩司撮影)。

 この影響で、JRバス「プレミアムドリーム」「プレミアムエコドリーム」が減便を続けているほか、不定期運行に切り替えたり、通常の3列シート車および格安4列シート車に代替したりする事例も。ウィラー・エクスプレス「コクーン」「エグゼグティブ」のように、車両老朽化・安全対策強化を理由に運行を終了する事例も出てきています。そのためか、全席2列シートの夜行バスが広まるかと思いきや、なかなか普及していないのが現状です。

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コメント

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1件のコメント

  1. はかた号は最近、乗る機会ないからなんとも言えないけど、以前のやつはまさに豪華感満載だった。