ベルギーがF-35導入の意義は? 日本も他人事ではないその決定をどう読み解くべきか
なぜベルギーの選択が大きなニュースになるのか?
EU(ヨーロッパ連合)は軍事面でのアメリカへの全面的依存から脱却を図っており、EUの本部が首都ブリュッセルに置かれているベルギーが、アメリカ製のF-35Aを導入したことに対して、ヨーロッパ諸国のなかからは批判の声が上がっています。
ベルギーのシャルル・ミシェル首相は、パイロットや整備士の訓練や保守費用といった総合的なコストでは、F-35Aの方が「タイフーン」に比べて安価であったことを選定理由のひとつに上げていますが、F-35Aを選んだ背景には、もうひとつ大きな理由があると見られています。
ベルギーとドイツ、イタリア、オランダは、NATOが核兵器を使用する際、独自の核兵器を持たない加盟国が核兵器の使用計画に参加する核抑止政策「ニュークリア・シェアエリング」(核兵器の共有)に参加しています。参加国はアメリカ軍の所有する「B61」核爆弾を自国内に備蓄し、有事の際にはアメリカの許可を得た上で、自国の戦闘機にB61を搭載して使用することとなっており、ベルギー空軍のF-16AM/BMはB61核爆弾の運用能力を備えています。
ベルギー空軍の新戦闘機計画に応募した4機種のうち、「グリペンNG」とユーロファイター「タイフーン」は核兵器の搭載能力を備えていません。ラファールはTN81核弾頭を搭載する空中発射型巡航ミサイル「ASMP」の運用能力を備えていますが、B61核爆弾の運用能力はありません。
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これに対しF-35Aは2020年代前半の実用化を目指して、F-35の胴体に収容可能なB61の派生型「B61-12」の開発が進められており、アメリカがNATOのニュークリア・シェアリングから手を引かなければ、F-35を導入したベルギー、イタリア、オランダにはこれまで通り、国内への核兵器の備蓄と、3か国空軍による核兵器の使用が継続されることになります。
ドイツは現在、「トーネードIDS」戦闘機でB61核爆弾を運用しており、ベルギーと同様の理由から、「トーネードIDS」の後継機としてF-35Aを導入することを検討していました。しかし2017(平成30)年にフランスとのあいだで「タイフーン」と「ラファール」を後継する新戦闘機の開発で合意して以降は、自国の戦闘機の開発・生産基盤を守るため、「トーネードIDS」の後継機として「タイフーン」の追加導入に傾いており、「タイフーン」を追加導入した場合、ニュークリア・シェアリングをどう維持するかが問題となっています。
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