「武蔵」発見の実業家はなぜ戦没軍艦探索に情熱を傾けたのか? 追悼ポール・アレン氏

沈没した戦艦「武蔵」発見の報を届けてくれた実業家のポール・アレン氏が亡くなりました。実業家であった彼が私財を投じ、戦没軍艦の探索や戦闘機の復元に取り組んだ背景などを解説します。

マイクロソフト社共同設立者にして戦没軍艦探索の第一人者

 2018年10月15日、ビル・ゲイツ氏と共にマイクロソフトを設立したポール・アレン氏が65歳で世を去りました。

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大和型1番艦「大和」(写真左)と同2番艦「武蔵」。1943年、トラック基地にて(画像:アメリカ海軍)。

 中学生時代にゲイツ氏と知り合ったアレン氏は、ゲイツ氏を説得して1975(昭和50)年にマイクロソフトを設立。マイクロソフト退社後も資産運用を行なうバルカン社を設立して成功をおさめ、2017年の時点ではその資産額が2兆円を超える、アメリカ史上でも屈指の成功した実業家として評価されています。

 その一方でアレン氏は、プロバスケットチームやプロバスケットチームのオーナーとなったり、私財を投じてSF博物館を設立したりするなど、様々な文化に対して私財を惜しみなく出資する人物としても知られていました。アレン氏は兵器に対する造詣も深く、父親が第二次世界大戦に従軍したこともあって、晩年は第二次世界大戦で戦没した軍艦の調査に熱心に取り組んでいました。

 アレン氏の戦没軍艦の調査に対する情熱は、もはや趣味の領域を超えており、2008(平成20)年には全長126.0m、排水量9932tの大型ヨットを購入し、2種類の海底探査機を搭載する海洋調査船「オクトパス」に改造して、沈没した軍艦の調査を行なっていました。

 しかし「オクトパス」はアレン氏が取り組んでいた自然保護活動や映画製作などにも使われていたため、1年間を通して戦没軍艦の調査に使用することができませんでした。このためアレン氏は2016年には全長76.45m、排水量3371tの石油探査船「ペトレル」を購入。1年をかけて改造を施し、世界に1隻しかない沈没船調査船を所有するに至っています。

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