血脈は自走砲から重機まで、陸自73式けん引車ファミリーとは?(写真10枚)

北海道専用装備と化した96式自走120mm迫撃砲

 前述した73式けん引車や87式砲側弾薬車、92式地雷原処理車が比較的全国で配備運用されていたのに対して、全数が北海道の部隊に配備されてしまっているレア車両が96式自走120mm迫撃砲です。

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車体後部を開放、射撃状態で展示される96式自走120mm迫撃砲(柘植優介撮影)。

 これまた形状が一新されてしまっているため、87式砲側弾薬車の派生型とは一見しただけでは思えませんが、足回りは92式地雷原処理車と一緒で、車体後部に120mm迫撃砲を搭載しているのが特徴です。ただし陸自は大量生産せず、北海道の第7師団1個部隊分24輌の生産のみで調達を終わらせました。そのため本州以南にはほとんど姿を現さない希少装備と化してしまっています。

装甲ショベルカー 施設作業車

 一方、車体の上に迫撃砲ではなく伸縮式のショベル・アームを装備した装甲ショベルカーというべき車両が施設作業車です。このショベルは、工事現場で見かける油圧ショベルとは違い、アームを伸縮させる構造のテレスコ(望遠鏡)式と呼ばれるもので、さらにショベルに加えて排土板(ドーザー)も備えており、1両で油圧ショベルとブルドーザーの両方の役割を担うことが可能です。また戦車や装甲車に追従できるよう最高速度は50km/hでます。

99式自走砲の女房役 99式弾薬給弾車

 陸自最新の99式自走155mm榴弾砲は、給弾システムの完全自動化を達成しているのが特徴ですが、そのために99式自走砲に連結して絶え間なく砲弾と装薬を供給するための専用運搬車が99式弾薬給弾車です。見た目は87式砲側弾薬車に似ていますが、99式自走砲と背中合わせになるように停車すれば、砲弾がベルトコンベヤーなどで99式自走砲の砲塔にそのまま運ばれていきます。まさに動く弾薬庫といえるでしょう。

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教育支援用に少数が配備されている富士教導団の施設作業車(柘植優介撮影)。
テレスコ式のショベル・アームを伸ばした施設作業車(月刊PANZER編集部撮影)。
車体後部に全自動の給弾システムを装備した99式弾薬給弾車(柘植優介撮影)。

 原型の73式けん引車はその名称のとおり、1973(昭和48)年度に制式化された車両ですが、それから45年が経過しても、その派生型は現在でも生産され続けています。外観にその面影を感じ取ることが難しいため、一見するとコンポーネントが流用されているとは思えませんが、ここまで長期間調達が続いている自衛隊車両はほかになく、まさに「その血は脈々と受け継がれている」といえるでしょう。

【了】

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Writer: 柘植優介(月刊PANZER編集長)

創刊40年以上を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)の編集人。子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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