御殿場線に残る「東海道本線」の歴史 単線の脇で複線時代の痕跡を探す(写真13枚)

神奈川県と静岡県を結ぶ御殿場線はいまではJRのローカル線のひとつですが、かつては「日本の大動脈」東海道本線の一部でした。「大動脈」の名残や山越えに使われていた蒸気機関車の歴史を訪ねてみました。

複線時代の施設が多数残る

 山北駅の沼津寄りには、線路の掘割を挟んで約130本のソメイヨシノが植えられ、毎年春になると桜のトンネルが現れます。その並木道を過ぎ、県道76号に入って酒匂川(さかわがわ)の左岸に出ると、右手に御殿場線の小さな鉄橋が現れました。箱根第1号トンネルと箱根第2号トンネルに挟まれた50mほどの区間で、現在の線路の手前にはもうひとつ、いまは使われなくなったトンネルと鉄橋が残っています。

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山北~谷峨間の「桜のトンネル」を抜ける沼津行き普通電車。毎年4月には多くの観光客とカメラマンでにぎわう(2009年4月、栗原 景撮影)。

 現在の御殿場線は、東海道本線時代の1901(明治34)年までに複線化されました。御殿場線となった後もしばらくは複線でしたが、戦時中の1943(昭和18)年に片側の線路が撤去されて単線に。これにより不要となったレールは、ほかの路線の建設などに使われています。このとき撤去されたのは旧上り線で、その後は旧下り線を上下の列車が走っていましたが、1968(昭和43)年に完成した電化工事では上り線を復活させ、線路を旧下り線から移設しました。いまは使われていないトンネルと鉄橋は、このとき廃止されたものです。

 鉄橋の前から県道を600mほど進むと、左手に箱根第2号トンネルの御殿場寄りの坑口が現れ、その上に赤い鳥居が見えます。あれは「線守稲荷神社」。「線路を守る」という意味の名前が付けられた神社には、こんな伝説があります。

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山北駅前にあるサイクルシェアポート。スマートフォンで会員登録しておけば、手軽に電動アシスト付き自転車を借りることができる(2018年10月、栗原 景撮影)。
東海道本線として開業したときは右の旧下り線側が建造され、複線化時に左側が増設された。下部の水路アーチの意匠が異なるのが興味深い(2009年4月、栗原 景撮影)。
2本並んだ箱根第2号トンネルのうち、旧下り線のトンネルは保線作業用通路として使われている。一般の人は立ち入ることはできない(2009年4月、栗原 景撮影)。

 明治時代、御殿場線のトンネル工事によってキツネの巣が壊され、人々はキツネの仕返しを恐れていました。やがて鉄道が開通すると、大きな置き石や赤いカンテラを振る人、髪を振り乱した女の人といった不思議な幻が、列車から何度も目撃されたといいます。

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