御殿場線に残る「東海道本線」の歴史 単線の脇で複線時代の痕跡を探す(写真13枚)
東海道本線時代の橋脚が現役
ある日、列車の機関士が線路上に寝そべる牛を見つけましたが、また幻だろうとそのまま走り続けると、強い衝撃がありました。あわてて停車して確かめると、線路脇で1匹のキツネが死んでいたのです。
トンネル工事を請け負った親方は、住処(すみか)を追われたキツネを哀れに思い、当時の山北機関区と相談してトンネルの上に祠(ほこら)を作りました。京都・伏見の稲荷神社からお札を受けた祠は「正一位線守稲荷神社」と名づけられ、盛大に祭礼を行ったところ、不思議な現象はなくなったそうです。
この神社は線路の安全を守る神社となり、いまも毎年4月には、JR東海御殿場工務区長が祭主を務めて祭礼が行われています。
線守稲荷の先では、狭い谷を酒匂川が蛇行し、御殿場線は3度も鉄橋で渡ります。明治時代に流行した『鉄道唱歌』で、「今も忘れぬ鉄橋の 下ゆく水のおもしろさ」と歌われているのはこの辺りの風景。県道を歩いて行くと、第2酒匂川橋りょうを見晴らすことができます。
現在架かっている鉄橋は1965(昭和40)年に架けられたもの。それ以前は1877(明治10)年に多摩川に架けられた東海道本線・旧六郷川橋りょうのトラス橋が大正時代に移設され、約40年にわたって使われていました。このトラス橋は引退後に鉄道記念物に指定され、一部は愛知県の博物館明治村に、別の一部は静岡県三島市の「JR東海 総合研修センター」に保存されています。一方、立派なレンガ造りの橋脚2基は、1889(明治22)年の東海道本線開業時に建造されたものが現役。東海道本線の歴史を伝える、貴重な文化遺産です。
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第2酒匂川橋梁から谷峨駅までは、県道で約1.7km。谷峨駅の手前には小さなドライブインもあり、いまの時期なら紅葉を見ながら手軽な歴史散策を楽しめます。
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