御殿場線に残る「東海道本線」の歴史 単線の脇で複線時代の痕跡を探す(写真13枚)

東海道本線時代の橋脚が現役

 ある日、列車の機関士が線路上に寝そべる牛を見つけましたが、また幻だろうとそのまま走り続けると、強い衝撃がありました。あわてて停車して確かめると、線路脇で1匹のキツネが死んでいたのです。

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箱根第2号トンネル旧下り線側の上にある線守稲荷神社。JRの敷地内にあり境内は原則として立入禁止(2018年10月、栗原 景撮影)。

 トンネル工事を請け負った親方は、住処(すみか)を追われたキツネを哀れに思い、当時の山北機関区と相談してトンネルの上に祠(ほこら)を作りました。京都・伏見の稲荷神社からお札を受けた祠は「正一位線守稲荷神社」と名づけられ、盛大に祭礼を行ったところ、不思議な現象はなくなったそうです。

 この神社は線路の安全を守る神社となり、いまも毎年4月には、JR東海御殿場工務区長が祭主を務めて祭礼が行われています。

 線守稲荷の先では、狭い谷を酒匂川が蛇行し、御殿場線は3度も鉄橋で渡ります。明治時代に流行した『鉄道唱歌』で、「今も忘れぬ鉄橋の 下ゆく水のおもしろさ」と歌われているのはこの辺りの風景。県道を歩いて行くと、第2酒匂川橋りょうを見晴らすことができます。

 現在架かっている鉄橋は1965(昭和40)年に架けられたもの。それ以前は1877(明治10)年に多摩川に架けられた東海道本線・旧六郷川橋りょうのトラス橋が大正時代に移設され、約40年にわたって使われていました。このトラス橋は引退後に鉄道記念物に指定され、一部は愛知県の博物館明治村に、別の一部は静岡県三島市の「JR東海 総合研修センター」に保存されています。一方、立派なレンガ造りの橋脚2基は、1889(明治22)年の東海道本線開業時に建造されたものが現役。東海道本線の歴史を伝える、貴重な文化遺産です。

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第2酒匂川橋梁を渡る沼津行き普通電車。1965年までは右側の旧下り線側を列車が通っていた(2018年10月、栗原 景撮影)。
JR東海三島研修センターに保存されている、旧第2酒匂川橋梁(2代目六郷川橋梁)。東海道本線時代の仕様に復元されている(2017年3月、栗原 景撮影)。
谷峨駅の手前で線路をまたぐ県道からも旧線跡を観察することができる(2018年10月、栗原 景撮影)。

 第2酒匂川橋梁から谷峨駅までは、県道で約1.7km。谷峨駅の手前には小さなドライブインもあり、いまの時期なら紅葉を見ながら手軽な歴史散策を楽しめます。

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