「戦車+ミサイル=最強!」を本当にやった西独、米、旧ソ連 使いものにはなったのか?(写真15枚)

ミサイルと大砲両方撃てれば最強! のはずが

 しかし案の定というべきか、ハイブリッドガンであるXM150砲は、砲弾とミサイルふたつの照準と誘導システムを組合せた、複雑な構造で故障の多い難物でした。

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砲身から「シレイラ」ミサイルを発射するM551「シェリダン」空挺戦車(画像:アメリカ陸軍)。

「シレイラ」ミサイルもつねにメンテナンスが必要な精密品で、当時の技術では目標命中まで誘導し続ける必要があり、最大射程は3000mでしたが、目標に到達するまで10秒以上かかりました。命中率は大砲より良いとはいえ、とても「必殺」と呼べるレベルの代物ではありません。しかも、ミサイルの価格は砲弾の20倍以上でした。

 冷静に考えると、わざわざ二重の複雑な射撃統制装置を開発するより、通常砲弾専用の高度な射撃統制装置を開発して、砲弾の命中率を高めたほうが実用的でした。結局、西ドイツはハイブリッドガンの開発を諦めます。そしてMBT70戦車の開発自体も放棄されてしまいます。

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アメリカが完成させたハイブリッドガンM81砲(画像:月刊PANZER編集部)。
M551「シェリダン」空挺戦車(画像:月刊PANZER編集部)。
M60A2戦車。太く短い砲身が特徴。砲弾よりもミサイルを中心に使う予定だった(画像:月刊PANZER編集部)。

 一方のアメリカは「ミサイル万能論」にこだわり続け、「シレイラ」ミサイルが使えるハイブリッドガン「M81砲」をなんとか完成させました。このM81砲はM551「シェリダン」空挺戦車とM60A2戦車に搭載されました。しかし複雑な構造による不具合は解決されず、M60A2は1966(昭和41)年の採用決定から部隊配備まで6年もかかってしまいました。配備後も故障の多さに悩まされ続け、現場部隊の評判も芳しくなく、結局、西側陣営においてハイブリッドガンはモノにはなりませんでした。

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コメント

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3件のコメント

  1. 西側で実用化されなかったからか?ゲテモノ扱いだが、対空戦車に対空ミサイルが装備されてるのは結構有効なのではないかな。

    西側がしくじったのは、大口径にしちまった為もあるのでは? ただでさえ携行弾数が限られてるところに、砲弾デカいわさらにデカいミサイルも載せなきゃ、って厳しいでしょ。それで他の機器の容積や重量が制約されてトラブルを誘発してたのかもよ。

  2. 「ゲテモノ」と評してる時点で思考放棄。
    ロシアは砲+ミサイルの運用方法を着実に蓄積し、進化し続けてる。パーンツィリはこれから増大すると予想されるドローン特攻に対応させるために開発されたらしいし、既に実戦で戦果も挙げている。
    西側の戦術は、専用化した機種を組織的に組み合わせて運用していて、それは確かに一理あるけれど、ロシアの兵装は1機で多種の任務をこなす。例え性能的に専門機種に劣るとしても、これで廉価なんだもの、「ゲテモノ」呼ばわりしてないで違う方面に進化していると認識すべきなのでは?

  3. ミサイルと機関砲のハイブリッド対空戦車はむしろ世界のスタンダードになっている。
    近samとの同時運用を考えているのだろうが
    上手くいくか甚だ疑問だ。
    実戦していない自衛隊の装備の方が合理的で、未知で野蛮な東側の装備が不合理などとは夢々思わない方がいい。