韓国艦のレーダー照射、なぜ危険なのか? 背景に「発射=撃墜」の艦対空ミサイル

P-1は韓国艦にとって脅威たりえたか?

 つまり「広開土大王」がP-1に対してSTIRを照射したということは、「あなたの命はこちら次第」と宣言し、これを追い払ったとみなすことができます。また2014年に、日本や韓国、アメリカ、中国など21か国において合意された「海上衝突回避規範(CUES)」にも反しており、このような重大さから日本は韓国に対して強く抗議し続けているのです。

Large 181228 p1 03

拡大画像

RIM-162D「シースパロー(ESSM)」。同じ名前だが事実上、別のミサイルであり、2018年現在はこちらが主流となりつつある(画像:アメリカ空軍)。

 一部報道においては、「他国なら(「広開土大王」の)撃沈もありえた」という声も聞こえますが、これはあり得ません。哨戒機にとって、駆逐艦へ単独で攻撃を仕掛けることは自殺行為だからです。

 仮に他国の哨戒機が対艦ミサイルを発射したとしても、「広開土大王」は遠距離の「シースパロー」、中距離の艦砲、近距離のCIWS 30mm機関砲による三段構えの迎撃手段を持ち、1発や2発程度の対艦ミサイルでは、この多層防御を打ち破ることは困難です。

 また「広開土大王」はSTIRを2基搭載し、対艦ミサイルと哨戒機(ないし複数の対艦ミサイル)に対して「シースパロー」を同時に誘導可能であるため、哨戒機側は対艦ミサイルもろとも撃墜されてしまうことになります。現代戦における「航空機 VS 軍艦」は、圧倒的に軍艦が強く、航空機側は退避する以外に手はありません。実際、P-1も退避行動をとっています。

「広開土大王」側に「シースパロー」を射撃する意図は無かったと思われます。しかし、意図せず誤射してしまったという事件・事故は、決して珍しいものではありません。韓国側はこうした事故を未然に防ぐためにも、再発防止と日本に対する説明を真摯に行うべきです。

【了】

この記事の画像をもっと見る(5枚)

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。