橋はあるのにみんな船通勤!? しまなみ海道の下の「渡し船銀座」1日数百往復!
橋があるのに数百往復 しかし経営は苦境
尾道市の資料によると、3社の航路を合計した1日の運航本数は2016年10月現在で721本、360.5往復とされています。各船とも、港に到着するとあっという間に乗客を降ろし、また積んで手早く折り返していくという頻発ぶりです。とはいえ、尾道と向島には橋も架かっていて、実質陸続きの状態。なぜ渡し船がここまで重宝されるのでしょうか。
全盛期には渡船会社が7社あり、船長が休む暇もないほど年中賑わっていたという向島は、1968(昭和43)年に尾道大橋が開通して本土とつながりました。ここから、渡し船はじりじりと乗客の減少に悩まされることになります。
その後、「しまなみ海道(西瀬戸道)」の建設が進み、1999(平成11)年にはその一部として尾道大橋に並行し新尾道大橋が架けられました。しまなみ海道など本州と四国を結ぶ橋の「開通後2年内に航路を廃止すると補償金が出る」という「本四特別措置法」の期限内に2社(玉里渡船、有井渡船)が撤退。その後、島の東端にあった「桑田航路」も撤退し、現在の3社が残ったのです。
当初は有料だった尾道大橋も、開通から45年を経た2013(平成25)年に無料化されました。このため、残った3社の渡し船も乗客が減少傾向にあり、尾道市が渡船に出す補助金も少しづつ増えています。また、人手不足や担い手の高齢化も無視できません。2018年11月には、福本渡船が平日の日中と日曜に運航を休止するという大幅な減便を行っています。
しかし、徒歩や自転車で向島に向かう人々には渡船が欠かせません。尾道大橋が架かっている場所は島の中心部から3km東にあり、本土側の尾道駅などから島の中心部へ向かう場合、大きく迂回を強いられます。また朝晩の尾道大橋は渋滞も激しく、その点でも渡船の優位性はまだまだ大きいのです。
しまなみ海道が開通した頃って、各航路が下火になる予想は付いていただろうが、後にこういった「サイクリストの聖地」として渡船の利用が見直されることになるとは誰が思っただろうか!