車内販売終了でどうなる? 北海道の名駅弁「かにめし」、原型は「丸ごとゆでガニ」!?
「かにめし」以前は「丸ごとゆでガニ」
SL列車の時代、函館本線と室蘭本線が交わる長万部駅では多くの列車が、運行に必要な水の補給などで10数分ほど停車していました。当時、札幌~函館間の所要時間は6時間以上。長万部駅はその中ほどに位置しているうえ、周辺には大きな駅がないこともあり、駅弁が売れる要素が整っていたといえるでしょう。
「かなや」の初代社長、金谷勝次郎さんは、長万部駅で戦前から弁当などの構内販売を行っていました。しかし、戦後は米が不足し、幕の内などの弁当を作ることが困難に。そうしたなか、留守を預かる社長の妻が、駅のすぐ近くの噴火湾で多量に水揚げされる毛ガニをゆでて新聞紙で包み、弁当として販売を始めました。
いまでこそ毛ガニは高級品の扱いですが、当時はむしろ、網を切る漁の邪魔者として捨てられる場合も多かったとのこと。この毛ガニ販売は大きく評判を呼び、全国を放浪中に通りかかった作家の檀 一雄さんも、その味を称賛(エッセイ集『美味放浪記』)。さらに名が知れることになりました。
しかし、毛ガニは水揚げ時期が夏に限られてしまいます。また、列車内にはカニの匂いが充満し、至る所に殻が散乱するように。この事態を改善すべく開発されたのが、ほぐし身を敷き詰めた現在の「かにめし」だったのです。
発売にあたっては、各地の食材を食べている鉄道関係者に何度も試作品をふるまい、意見を聞いては改良を繰り返したそうです。毛ガニの保存用に、当時としては異例の業務用大型冷凍庫を導入し、1年中食べられるようになった「かにめし」は、長万部駅の名物として定着することになります。
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