市自ら選んだ「攻めの鉄道廃止」 JR石勝線夕張支線、代替バスはどう「進化」したのか

代替バスは市内交通網という「木」の「幹」に

 では、夕張市はなぜ自ら「攻めの廃線提案」を行い、市内の交通網をどのように再編しようとしているのでしょうか。

 夕張市では、鉄道の廃止受け入れ以前に「夕張市まちづくりマスタープラン」を策定。石勝線夕張支線に沿った南北軸を骨格とし、清水沢地区を都市拠点とする「コンパクトシティ」化の計画を推進しています。鈴木前市長が取り組んでいた市の再生に向けての目玉政策が、まさしく「コンパクトシティ」の実現であり、それには機能性と機動性を備えた交通体系の整備が欠かせず、その方向性が定まらないことには、市の再生計画は進まないと考えていました。

 そこへ、JR北海道が維持困難な路線網の見直しを近々公表するという情報が入り、夕張市側は、JRの協力のもとで少しでも有利な条件を引き出したいという狙いから、いわゆる「攻めの廃線提案」を行い、地域の実情に合わせた、長期的に持続可能な交通体系づくりに踏み出したのです。

 現在、夕張市は市内の交通網を、「木」でいう「幹」と「枝」の関係に再編しようとしています。市はJR北海道との廃線合意後、市内を走る路線バスの一部区間廃止とデマンド交通化(利用者の求めに応じて運行する形態への変更)、およびタクシー補助制度の導入を数年かけて実施してきました。そして、今回運行を開始した夕鉄バス「夕張市内線」は、夕張市の新しい交通体系の軸となる路線であり、交通体系再編の仕上げ的路線ともいえましょう。「木」でいえば、「夕張市内線」が「幹」、デマンド交通やタクシーが「枝」の役割を担うことになります。

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夕張支線の廃止後、駅は閉鎖された。南清水沢駅(須田浩司撮影)。
新夕張駅に停車する新さっぽろ駅前行きのバス(須田浩司撮影)。
夕張市石炭博物館に停まる新夕張駅前行きのバス(須田浩司撮影)。

 そして、2019年度には、南清水沢地区に交通結節施設(バスターミナル)のほか、行政施設、公民館、図書施設、子育て支援施設、児童館施設を備えた拠点複合施設が完成する予定です。これにより、夕張市の交通体系再編は、ひとまず完成の域に近づくことになります。

【写真】「夕張支線最後の日」「代替バス最初の日」の様子

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コメント

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3件のコメント

  1. 輸送貨物量を路線図に重ね合わせた図も示さないと片手落ちの感は否めない。
    北海道東部各地から本州方面への農産物輸送を考慮しないまま、旅客だけの視点で廃止の議論をするのは間違っている。

  2. 『現在』の『旅客輸送』だけで見れば、夕張鉄道線の早期廃止はかなり惜しかったのかも?

  3. 人の動きしか見れないのは何故だろう?
    物は?
    旅客が廃止でも貨物線で残さざるをえない路線の代表が函館本線と江差線と海峡線。
    函館本線は室蘭本線不通時のバイパス、石北本線と根室本線も道東の貨物輸送に欠かせない筈。
    宗谷本線も、樺太に近い稚内にはそれなりの潜在需要有る気もする。
    宗谷本線と嘗ての天北線を復活させ、宗谷海峡を海底トンネルで樺太に繋ぎ、樺太の路線を経由してシベリア鉄道に接続する構想も有るぐらいだし。
    もしも実現すれば日本とユーラシア大陸の殆どの国同士が鉄道で結ばれる。
    ロシア側が積極的にやりたがっているが日本側が消極的だ。