市自ら選んだ「攻めの鉄道廃止」 JR石勝線夕張支線、代替バスはどう「進化」したのか

市自ら「攻めの廃止提案」へ

 そのようななか、2016年8月8日、夕張市の鈴木直道市長(当時)がJR北海道本社で島田社長と会談し、次のような提案をします。

・交通網見直しへの協力。
・地元の求めに応じた無償譲渡などJR所有施設の有効活用。
・JR社員の夕張市への派遣。

 これらを条件に、石勝線夕張支線の廃止を自ら提案(いわゆる「攻めの廃線提案」)。代替交通への協力を要請したのです。JR北海道は検討の結果、同年8月17日に前途3条件について全面協力することを約束し、新夕張~夕張間の鉄道事業廃止を正式に申し入れました。

 その後、JR北海道は社内に夕張市内の交通体系見直しなどに協力するプロジェクトチームを設置し、課長級の社員1名を夕張市へ派遣します。さらに、2018年3月23日、夕張市とJR北海道は、新夕張~夕張間の鉄道事業廃止について、次のような条件で最終合意に至ります。

・鉄道事業廃止日を2019年4月1日とすること。
・JR北海道は、夕張市に対して、持続可能な交通体系を再構築するための費用として7億5000万円を拠出すること。
・JR北海道は、夕張市が南清水沢地区に整備を進めている拠点複合施設に必要となる用地を一部譲渡すること。

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2019年3月31日まで走っていた夕張市内の循環系統(須田浩司撮影)。
2019年3月31日、運行最終日の夕張駅(須田浩司撮影)。
夕張駅の時刻表。廃止までの約2週間は1日5往復が8往復に増発された(須田浩司撮影)。

 こうして、同年3月26日、JR北海道が国土交通大臣宛に石勝線夕張支線の鉄道事業廃止届を提出し、2019年4月1日(月)、石勝線夕張支線は正式に廃止されたのです。

【写真】「夕張支線最後の日」「代替バス最初の日」の様子

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コメント

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3件のコメント

  1. 輸送貨物量を路線図に重ね合わせた図も示さないと片手落ちの感は否めない。
    北海道東部各地から本州方面への農産物輸送を考慮しないまま、旅客だけの視点で廃止の議論をするのは間違っている。

  2. 『現在』の『旅客輸送』だけで見れば、夕張鉄道線の早期廃止はかなり惜しかったのかも?

  3. 人の動きしか見れないのは何故だろう?
    物は?
    旅客が廃止でも貨物線で残さざるをえない路線の代表が函館本線と江差線と海峡線。
    函館本線は室蘭本線不通時のバイパス、石北本線と根室本線も道東の貨物輸送に欠かせない筈。
    宗谷本線も、樺太に近い稚内にはそれなりの潜在需要有る気もする。
    宗谷本線と嘗ての天北線を復活させ、宗谷海峡を海底トンネルで樺太に繋ぎ、樺太の路線を経由してシベリア鉄道に接続する構想も有るぐらいだし。
    もしも実現すれば日本とユーラシア大陸の殆どの国同士が鉄道で結ばれる。
    ロシア側が積極的にやりたがっているが日本側が消極的だ。