海の支配者は飛行機か? WW2前夜、世界を巡ったドイツ弩級戦艦撃沈実験の衝撃とその後
「大艦巨砲主義」への誤解
現在、日本では「第2次世界大戦前までは『大艦巨砲主義』が世界的な主流であり、タラントやパールハーバー、マレー沖の結果から航空戦力の価値が見直され、戦艦同士の海戦から航空機中心の戦い方へ移行した」という説が広く信じられています。しかし事実として、海上航空戦力は日本でもアメリカでもイギリスでも、第2次世界大戦のはるか以前より入念に整備されていました。だからこそ戦争初期の段階で、飛行機の価値が「実証できた」と言えるでしょう。
特にパールハーバー攻撃は、連合艦隊司令長官であった山本五十六が半ば強引に主導したことで知られますが、彼の頭の中には「オストフリースラント」が沈没した20年前から存在していたプランであろうことは、「戦艦対飛行機問題」の記述からも明らかです。
第2次世界大戦において戦闘の結果、沈没した戦艦は、数え方の定義にもよりますが24隻に達します。そしてその大多数を占める15隻において、航空攻撃が決定的な役割を果たしました。沈没した15隻のうち8隻は港における停泊中であり、7隻は航海中でした。航海中の7隻のうち2隻は水上艦との「共同戦果」となっています。
第2次世界大戦期、航空攻撃により沈んだ戦艦
●日本
・榛名(停泊中。米軍による)
・比叡(+砲雷撃。米軍による)
・伊勢(停泊中。米軍による)
・日向(停泊中。米軍による)
・大和(米軍による)
・武蔵(米軍による)
●イギリス
・プリンス・オブ・ウェールズ(日本軍による)
・レパルス(日本軍による)
●アメリカ
・アリゾナ(停泊中。日本軍による)
・オクラホマ(停泊中。日本軍による)
●ドイツ
・ティルピッツ(停泊中。イギリス軍による)
・ビスマルク(+砲雷撃。イギリス軍による)
●イタリア
・コンテ・ディ・カブール(停泊中。イギリス軍による)
・ローマ(ドイツ軍による)
●ソ連
・マラート(停泊中。ドイツ軍による)
●航空攻撃以外の要因によるもの
・金剛(日本。潜水艦)
・霧島(日本。砲撃)
・扶桑(日本。砲雷撃)
・山城(日本。砲雷撃)
・フッド(イギリス。砲撃)
・ロイヤルオーク(イギリス。潜水艦)
・バーラム(イギリス。潜水艦)
・ブルターニュ(フランス。砲撃)
・シャルンホルスト(ドイツ。砲雷撃)
※:戦闘以外の損失や沈没後引き上げられ復旧した艦は除く。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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