「戦いは数」どう支える? M4「シャーマン」戦車、「偉大なる大量生産」の実現
最後の現役「シャーマン」退役は2018年!
M4「シャーマン」の各タイプは、基本的に搭載するエンジンで分類されますが、ほかにも、車体構造で鋳造と溶接、両者混用の3種類あり、さらに主砲も75mm砲、76.2mm砲、105mm砲の3種類、サスペンションも初期型と後期型の2種類あります。これらを混乱なく生産し続けられたのは、アメリカが大量生産能力だけでなく、優れた生産管理能力も持ち合わせていたからでした。
さらには、M4「シャーマン」の後継として、より優れたT20中戦車を開発していたにもかかわらず、量産開始にともなう生産ラインの混乱と、生産効率の低下を嫌って、これの制式採用を見送ったことでした。いかにアメリカが性能よりも数をそろえることに腐心していたかわかります。
ちなみに、日本で最も多く生産された戦車は、1935(昭和10)年に制式採用された「九五式軽戦車」で、約8年のあいだに工場7か所で合計2378両が生産されました。M4「シャーマン」に比べると、生産期間は2倍以上なのに生産数は20分の1以下でしかありません。
こうして大量に生産されたM4「シャーマン」でしたが、戦争が終結すると一転して多数が余剰となったため、相当な数が友好国へ供与されることになります。世界中の親米国に引き渡され、様々な形で世界約40か国にて使用されたM4「シャーマン」は、日本のようにほぼオリジナルのまま使い続けた国もあれば、イスラエルやチリのように独自改良を加えて性能向上を図った国もあり、戦後は大戦中以上に様々な派生型が枝分かれするように生まれていきました。
そして2018年には、長らく使い続けていた南米パラグアイから世界最後の現役「シャーマン」が退役しました。1941年の誕生から77年間も使われ続けたことになります。
【了】
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
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