中国が新型「軽」戦車を作ったワケ 対戦車戦は無理! 特異なスペックに見る意図、背景

中国が新規開発し運用を始めたとある戦車は、対戦車戦など眼中にないようで、装甲も武装も強力とはいえません。それはまるで、かつての「軽」戦車のよう。伝えられるわずかな情報と写真や映像から、その開発意図を読み解きます。

特異すぎるスペックから読み取れるものは…?

 読み解くカギは、中国の通信社である「新華社」の、今回のパレードを伝える記事にありました。そのなかで15式軽戦車とその運用部隊について、「観閲を受けた軽戦車隊列は、チベット軍区にある混成旅団の中核で編成されています。部隊の駐屯地は最高標高4800mに達しており、将兵らは閲兵式のため南西部から4000km以上を移動し、首都北京の天安門広場までやって来たのです」と紹介しています。

 移動距離4000kmというのは、東京と北京の直線距離が約2100kmですので、その距離感がわかるでしょうか。また、標高4800mといえば、富士山山頂(3776m)よりも高地です。標高0mで気圧1013hPa、気温摂氏25度、酸素濃度100%のとき、標高4800mでは気圧569hPa、気温摂氏マイナス4度、酸素濃度56%となります。人間の活動はもちろん、戦車のエンジンを動かすだけでも大変なことです。15式軽戦車は、開発段階では冷却水管の破裂、エンジン火災、油気圧パワーアシスト破損、射撃不良などあらゆる面で難航し、8年をかけてようやく完成、標高5100mでの連続テスト走行で平均時速69km/hを達成したといいます。

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15式軽戦車の後部。長距離移動に備えた外装式燃料タンクが目立つ。追加燃料タンク無しでは航続距離は450kmとされている(2019年10月1日、Gordon Arthur撮影)。

 薄い空気でも作動するよう、エンジンにはツインターボを搭載し、乗員用には酸素ボンベの追加や暖房装置、紫外線防止装置の搭載など対策が進められたそうです。他方、標高が低い平地ではエンジンが不調になるので、ツインターボは使わないという、極めて特殊なスペックの戦車なのです。

 そのような特殊なものを作ったのには、次のような理由があると考えられます。

 中国のチベット地域を含む南部戦区は、政情が不安定であり、インドとも国境を接しています。対抗するインド軍もT-90やT-72という主力戦車を持ってはいますが、高地では使えません。歩兵戦闘が中心になりそうですが、そこに軽戦車とはいえネットワーク化された機動火力があれば、圧倒的に有利になります。

【図解】「15式軽戦車」車体前部のセンサー類を読み解く

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