東京23区屈指の閑散駅「三河島」には何があるのか? その住所は「西日暮里」な下町
山手線や千代田線、京成本線の駅が徒歩圏内
ちなみに、JR山手線と京浜東北線、東京メトロ千代田線、日暮里・舎人ライナーが発着する西日暮里駅の住所は「西日暮里5丁目」。三河島駅から歩いて13分ほどの距離です。同じく山手線の日暮里駅や鶯谷駅も弧を描くような形で離れているため、歩いて直線的に移動するといずれも13分から15分ほどで移動可能です。山手線の駅が徒歩圏内ともなれば、地域の住人にとってわざわざ常磐線しか停車しない三河島駅を利用する必要性は薄いのかもしれません。また、三河島駅から少し北に行けば、京成本線の新三河島駅もあります。至近に駅が多く利用者が分散していることも、三河島駅の乗車人員が少ないことの一因ではないでしょうか。
三河島駅から尾竹橋通りで新三河島駅に向かう途中、斜め右手に狭い路地を入っていくと、「浄正寺(じょうしょうじ)」と呼ばれる浄土宗のお寺があります。ここに、冒頭で述べた三河島事故の慰霊碑である「三河島観音」が安置されています。お寺の入口にある山門には「三河島事故慰霊聖観音安置」と書かれており、隣には荒川区教育委員会による由来書があります。
かつて三河島駅の一帯は「三河島町」という地名でしたが、現在では「三河島」という住所はなく、駅名や銀行の支店名などにしか残されていません。その理由には諸説ありますが、一説には三河島事故による負のイメージを払拭する意図があったともいわれています。
三河島駅は、駅の利用者こそ多くはありません。しかしかつてのこの地の名前を受け継ぐ駅として、そしてあの悲惨な事故の記憶を今に残す駅として、重要な存在であり続けるのかもしれません。
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Writer: 河嶌太郎(ジャーナリスト)
1984年生まれ。千葉県市川市出身。『週刊朝日』『AERA』などの雑誌のほか、「Yahoo!ニュース個人」「AERA dot.」「DANRO」「ITmedia」などのウェブで執筆。アニメを用いた地域振興からゲーム、IT、鉄道など幅広い分野を扱う。国内の鉄道路線の乗り潰しが趣味だが、災害による不通路線を残したまま数年が経過中。
駅の場所は住所ではなく所在地だと思います。