戦闘力低い下駄履き零戦「二式水上戦闘機」 なぜ旧日本軍では重宝されたのか?

アメリカは工業力と機械力で水戦の必要なし

 二式水戦は、太平洋戦争緒戦の日本の戦線拡大によって、開発時の構想どおり飛行場設営が追い付かない最前線で活動し、北はアリューシャン列島から南はソロモン諸島まで、様々な場所で要地防空や船団護衛、海洋哨戒など多用途に用いられました。

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太平洋戦争中、南太平洋の水上機基地で翼を休める二式水上戦闘機(画像:アメリカ海軍)。

 しかし、このような水上戦闘機は日本特有で、第2次世界大戦においては他国で同種の機体はほとんど使用されませんでした。一応、アメリカ海軍ではF4F「ワイルドキャット」戦闘機にフロートを付けたF4F-3S「ワイルドキャットフィッシュ」が、イギリス海軍では「スピットファイア」戦闘機にフロートを付けた水上戦闘機型がそれぞれ製作されましたが、これらは試作で終わっています。

 そもそも、アメリカは圧倒的な工業力と機械力によって、陸上であれば多数の重機を持ち込んで、短期間で飛行場を作り上げる能力を有していました。また大戦後半になると大量生産した各種空母によって、艦載機によるエアカバーが可能となり、艦載機よりも低性能な水上戦闘機の必要性がなくなりました。

 イギリスについては、島しょを取り合う戦闘を想定しておらず、対日戦が勃発したため急遽、水上戦闘機を製作したものの、陸戦主体のヨーロッパ戦線では必要なく、大西洋ではアメリカ供与の空母と艦載機で間に合っており、さらにイギリスの対日戦はインド方面で、水上機の出番はありませんでした。

 結局、第2次世界大戦(太平洋戦争)における水上戦闘機自体が、土木機械が足りない日本ならではの機体だったといえます。そのため日本の形勢が不利になると、活動の場は減りました。

 ちなみに本命の「強風」については、二式水戦の生産終了後となる1943(昭和18)年12月1日に制式採用されましたが、ほとんど活躍することなく生産もわずか97機で終了しています。

【了】

【写真】「野生のナマズ」と呼ばれたアメリカ製水上戦闘機F4F-3S

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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コメント

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4件のコメント

  1. 日本軍の飛行場建設能力は一般に思われているよりはるかに高く、機械化されていました
    上陸して28日で完成や、着工して20日で完成の例もあります
    どちらかと言えば飛行場を作りえない島嶼に戦力の空白を作り出さないための存在であると個人的には考えていますし、どこかで聞いたような定説はまず根拠を確認すべきかもしれません

    不十分でも「そこにいる」ことに意味のある戦力なのでしょう
    飛行場など作りようのない小島ばかりが勢力圏にあった日本ならではの機体ですね

    • 完成度が違うでしょう。木を切って草むらにしたっていう程度の飛行場。また被害を受けた時の復旧速度も全然違う。これは噂とかではなく実際の話

  2. 強風については、最終的に紫電改にまで発展したことを記述すべきかと。
    二式水戦の逆の道を歩んだわけだから。

  3. 飛行場の完成度を問題にするというのなら
    運用している機体に見合う滑走路を用意できたかという視点で問題ないです
    米軍の方が離発着での事故率は概して高く、
    空戦での損失は日本側の未帰還行方不明全体と拮抗しているのに、喪失機数にすると
    運用喪失のせいで米側だけ2~3割増加するなんてことはざらです。
    日本機は軽量なため概して離着陸性能に優れており零戦からして
    非常に安定しており素晴らしい失速特性
    離陸はかなり早く、パイロットが殆ど操作しないうちに離陸する。
    着陸は極めて容易でグラウンドループの傾向無し(いずれも米軍評)
    なので平らにならしました程度で困らないんです。
    米軍は「地上で宙返り」が上手みたいですけどね。