映画『トップガン』敵はどこの軍だったのか?劇中情報と当時の世界情勢を考察した結果
舞台はインド洋 当時の「ミグ」保有国…状況証拠は揃ったか
2019年夏、公開された『トップガン マーヴェリック』の予告編において、マーヴェリックが着用していたジャケットから、日の丸と台湾のワッペンが無くなっていることが話題になりました。代わりに「インド洋クルーズ85-86」というワッペンになっていて、すなわち1作目『トップガン』で描かれた作戦行動を記念したものと見られます。また『トップガン』では夏服を着用していたことから、恐らく1985(昭和60)年の夏季のできごとだったと推測されます。
ここからは、映画の描写にはない筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)の考察ですが、当時のパキスタン空軍はアメリカまたはフランス、イギリス製の機種に加えアメリカからはF-16を購入するなど「西側」の航空機を配備し、ソ連とは時折、交戦状態にありました。一方インド空軍はMiG-21などソ連製戦闘機を多数、保有していました。
また、現実世界におけるアメリカ海軍戦闘機兵器学校、すなわち『トップガン』では、MiG-21をシミュレートする仮想敵機にF-5戦闘機を使用しており、架空のMiG-28もまた間接的にMiG-21がモデルであると考えると、やはり相手は地理的にも、MiG-21を保有していた事実からも、インド空軍であったのではないでしょうか。
もちろん映画はあくまでもフィクションであり、当時のアメリカがインドと戦う理由はありません。1981(昭和56)年には南地中海において、アメリカ海軍のF-14とリビア空軍のスホーイSu-22が交戦した「シドラ湾事件」があり、こちらなどもシナリオに影響を与えていたかもしれません。しかしながら上述したような状況から見て、インド空軍を意識していたことはほぼ間違いないところでしょう。
映画第2作『トップガン マーヴェリック』では、何と戦うことになるのでしょうか。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
敵、第五世代戦闘機の翼に日の丸。敵国はわが国、日本でした。ショックだけど