自衛隊 新型肺炎が日本で広がった場合 どこまでできるのか? 中国では事実上の街封鎖

映画などフィクションにおいては、危険な病原菌が蔓延した街を軍が封鎖し、出ていこうとする住民に対して発砲する、といった描写が見られます。実際、そうした病原菌が蔓延したとして、自衛隊は何をどこまでできるのでしょうか。

自衛隊が街を封鎖することはできる?

 それでは、災害派遣を命じられた自衛隊の部隊には何ができるのでしょうか。

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陸上自衛隊の化学防護車。放射性物質や有毒ガスなどの汚染地域でも行動できる。マジックハンドや機関銃を装備するが、いずれも車内から操作可能(画像:陸上自衛隊)。

 豚コレラや鳥インフルエンザの場合と同様に、感染の拡大を防ぐための防疫や除染活動のほかには、たとえばウイルスによる被害が発生した現場に人々が集まってきた場合、その場に警察官がいないときには、自衛官は警察官に代わってそこにいる人たちに警告を発し、必要ならば現場に近付こうとする人々を引き留め、そこからの避難を命じることなどができます(警察官職務執行法第4条の準用)。

 つまり自衛隊は、あくまでも警察官が現場にいない場合に限って、特定の場所から人々を避難させたり、近付くことを制限したりすることができるわけです。

 ただし、災害派遣では小銃などの火器を携行することができないので(自衛隊の災害派遣に関する訓令第18条)、たとえば映画のように銃火器をつかって人の立ち入りを制限することなどはできません。フィクションはあくまでもフィクションなのです。

 中国で発生した新型コロナウイルスはすでに日本でも発症例が報告されています。これ以上被害が拡大しないことを願うばかりです。

【了】

【写真】街中ではあまり見たくない陸自の「除染装置」

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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