軍用機 鼻の「ノーズアート」なぜ見られなくなった? ピンナップガール アニメキャラ
消えゆく文化か? 今後あまり見られなくなるかもしれないノーズアート
しかし、戦後アメリカの主導のもと航空自衛隊が発足すると、ノーズアートもアメリカ文化として日本に導入されました。アニメや漫画のキャラクターが描かれるようになり、アメリカナイズされたノーズアートが過熱していきます。F-4「ファントムII」は尾翼いっぱいにオジロワシが描かれ、記念塗装には有名な漫画家に機体いっぱいのノーズアートを依頼するまでになり、やがてこちらもアメリカ同様に規制が入るようになりました。
2020年現在は、アメリカ軍も航空自衛隊も、あまり大きなイラストは塗料も膨大になるため飛行性能に影響が出るとして、基地祭や記念行事の際に一部の機体が塗装されるだけにとどまっています。機体全体に塗装するとなると、その塗料はだいぶ重くなりますから、機体性能に影響が出るというのもうなずけます。
塗装ではなく、ステッカーシールで張り付ける方法もありますが、そちらも機体表面にわずかな凹凸が生まれるため、空気抵抗が変わってしまい、あまり良い方法ではありません。現在の戦闘機の表面には、多数のアンテナやレーダーが取り付けられているため、そうしたものに配慮して塗装を行うのも大変な労力になるでしょう。
このような状況を考えると、今後このノーズアートが、かつてのような活気を取り戻すのは難しいと考えられます。尾翼のスコードロンマーク(部隊マーク)でさえロービジ(低視認性)塗装が基本となり、上述のオジロワシは機体がF-35「ライトニングII」戦闘機に更新されると、白1色で比較的小さなものになりました。ステルス性がこれからも重要視されていくことでしょう。
このステルス性に関わる特別な塗料には赤色がまだ開発されておらず、赤い「日の丸」すら付けられない状況になっています。F-35戦闘機などの最新のステルス機に派手な記念塗装を施した例はまだほとんどなく、今後どのような記念塗装が行われるのか、そもそも実施されるのかすらわかりません。
戦闘機本来の役割を考えれば、敵に見つかりやすい派手な塗装はしないほうがよいというのはわかっていますが、それでもファンとしては寂しいものですね。
【了】
Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)
なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。
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