アメリカ海兵隊 戦車全廃か M1戦車大隊廃止 変わる戦い方 自衛隊・日本への影響は?

海兵隊再編の影響はもちろん自衛隊にも

 アメリカ海兵隊が戦車大隊を廃止して、対艦ミサイルや無人兵器システムの整備に力を入れる方針を示したことで、ネット上などでは陸上自衛隊や航空自衛隊もそれに習うべきなのではないかとの声も見受けられますが、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は必ずしもその声には同意できません。

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アメリカ海兵隊と陸上自衛隊の共同軍事訓練「アイアン・フィスト20」に参加した、水陸機動団の水陸両用車AAV7(写真:アメリカ海兵隊)。

 日本の防衛は自衛隊と日米同盟が車輪の両輪となっており、もし日本が本格的な侵攻を受けた場合は、アメリカ軍の支援が不可欠となります。アメリカに限らず陸軍は有事が発生してから展開するまでに時間がかかる組織のため、アメリカ軍は歩兵に加えて戦車をはじめとする装甲車両、航空機などを装備した、機動力の高い「ミニアメリカ軍」とでもいうべき海兵隊を最初に展開させて持ちこたえているあいだに、より大規模で長期間の戦闘が可能な陸軍を展開させるという戦略を採用してきました。

 日本が大規模侵攻を受けた場合も、海兵隊が最初に投入されることになる可能性は高いのですが、海兵隊が対艦ミサイルなどの長距離打撃戦力に力を入れた組織になるのであれば、むしろ陸上自衛隊は万が一海兵沿岸連隊による阻止ができなかった場合に備えて、戦車戦力を維持・充実させる必要性は高まったともいえます。

 ただ陸上自衛隊は、イージス・アショアの運用やサイバー戦への対応といった新たな任務も与えられており、さらに少子高齢化による若年人口の不足もあって、もはや戦車の保有数を増やせる状況にないこともまた事実です。

 そのなかで戦車戦力を維持し、さらに充実させていくためには、有事の際に迅速に戦車を展開させるための体制構築や、情報共有能力のさらなる強化を進めていくことが必要なのではないかと筆者は思います。

【了】

【写真】夜間訓練に臨むアメリカ海兵隊のM1A1「エイブラムス」戦車

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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