無茶しやがって…とも言い切れないアメリカ海軍の「空母から大型機を飛ばす試み」3選

空母を拠点に極秘偵察 U-2戦略偵察機

 空母から飛び立ったのは海軍機だけではありません。CIA(アメリカ中央情報局)所属のU-2戦略偵察機も空母から発艦しています。

 1960(昭和35)年ごろ、CIAとアメリカ海軍はU-2戦略偵察機を洋上哨戒に使えないかと考え、空母でU-2を運用するための各種試験を行いました。

Large 200611 ac 03

拡大画像

空母「アメリカ」で発着艦テストを行うU-2戦略偵察機(画像:アメリカ海軍)。

 まず1963(昭和38)年に空母「キティホーク」を用いて、U-2のタッチアンドゴーを実施します。これに成功すると、CIAは着艦フックを増設し、降着装置を強化するなどの改修を施したU-2Gを製作、1964(昭和39)年に空母「レンジャー」で着艦と発艦の両方を成功させました。

 このときU-2Gは、着艦については既存の艦載機と同じく着艦フックでワイヤーを引っかける形をとったものの、発艦はカタパルトを用いずに、向かい風を受けるだけで飛び立ったそうです。

 U-2Gは合計3機作られ、同年にフランスが南太平洋のムルロア環礁で行った核実験の情報収集に投入されます。

 その後、より大型で長距離かつ長時間飛行が可能な改良型のU-2Rが登場したことで、このタイプの艦載型も製作され、1969(昭和44)年11月に空母「アメリカ」で3日間の発着艦試験を実施しました。

 しかし、U-2Rは航続距離および滞空時間が非常に長いため、空母に搭載する必要がなく、結果、U-2Rの艦載型は採用されませんでした。

 また、のちに偵察衛星などが登場したことで、U-2Gの空母運用も幕を閉じます。結局、U-2の空母運用は、前述のムルロア環礁への偵察飛行のみで終わりました。

 このように、空母からは様々な航空機が飛び立っています。突飛と思えるようなことでも、技術の進歩とやる気さえあれば、案外できるのかもしれません。

【了】

【写真】陸上爆撃機がズラリと並んだ空母甲板

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

1件のコメント

  1. U-2は7万ft以上を飛ぶため翼面荷重が小さく、モーターグライダーのような設計ですので、確かに発艦時にカタパルトは不要ですね。軽負荷で滑走試験中、わずか40Kt程度で離陸してしまったことがあるそうです。
     ただし、ごく軽いGしか掛けられない機体ですから、普通の艦上機みたいに乱暴に飛行甲板へ「落とす」わけには行かないでしょう。それと…空母にポゴ(翼端の補助車輪)を用意しておかないと飛べませんね。エレベーターには乗らないと思いますし、荒天時は甲板に係留出来ないので、陸から飛んできて給油し、パイロットが一服したらまた飛び立つような運用を考えていたのでは。