操縦席直上にエンジンの空気吸入口…なぜそうなった? 危険なニオイのF-107試作戦闘機
安全性の問題? 手堅い設計のライバル機に敗北
F-105は胴体側面の主翼付け根に空気取り入れ口を持ち、胴体下部に爆弾倉のある手堅い設計の戦闘爆撃機でした。初飛行もF-107より早く1955(昭和30)年10月22日に行っています。ちなみにF-107の初飛行はそれから約1年後の1956(昭和31)年9月10日でした。
F-107は初飛行に成功したため、一応F-105と比較審査が行われたものの、もともとアメリカ空軍としてはF-105を本命視しており、F-107については保険の意味合いで、とりあえず開発させたようなものでした。
そのため、F-105が開発自体も滞りなく進んだことで、F-107が採用される可能性はなくなり、同機は試作機が3機作られただけで終わりました。
しかしF-107も決して性能が悪いわけではなかったことから、試験終了後の1957(昭和32)年11月に、NACA(アメリカ航空諮問委員会)へ移管され、高速飛行試験機として使われています。
なお、F-107はF-100「スーパーセイバー」の改良発展型として計画されたため、非公式に「ウルトラセイバー」という愛称が付けられています。しかし、正式採用されずに終わったため、メーカーやアメリカ空軍ではこの愛称は用いられていません。
F-107以降、アメリカ製の戦闘機で機体上部に空気取り入れ口のある機体は誕生していません。おそらく射出座席の構造上、空気取り入れ口は機体下部もしくは側面でないと安全性が保たれないのだと筆者(柘植優介:乗りものライター)は思います。
F-107のようなデザインは、まさにジェット戦闘機の過渡期だったからこそ生まれたものといえるのかもしれません。
【了】
※一部修正しました(6月26日9時13分)。
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
フォルクスイェーガーだっけか、WW2末期のドイツ空軍機が背中にインテイク(というかジェットエンジンそのもの)があった。また、スウェーデンのサーブグリペンの開発中には背負い式インテイクを検討してた(キャノピーの影で投影面積減らせるから)とのこと。グリペンがやめたのは、大迎角での気流の乱れのため。F-107もそうなんじゃないかな?
機体上部に空気取り入れ口を設けたジェット機に、アメリカのF2Y シーダートというのも有りましたね。こちらは離着水するために開口部を機体上部にしなくてはならなかったのではありますが。
超音速ジェット水上戦闘機という機体を試作できる国もすごい。
無人機だと丈夫エアーインテークが当たり前、レーダーの反射率を下げるためだが。