哨戒機は「転職組」が増加中 不振の旅客機から華麗に転身したP-3の拓いた「道」とは?

洋上での潜水艦監視などを主任務とする哨戒機、海上自衛隊が運用するP-3Cは、実は純粋に哨戒機として設計されたものではありませんでした。その開発経緯をたどりつつ、世界の「転職組」哨戒機を概観します。

不本意なセールスだった「エレクトラ」だけど…訪れた一大転機

「エレクトラ」が初飛行した1957年、アメリカ海軍は当時、運用していたP2V「ネプチューン」に代わる新たな哨戒機の開発要求をメーカーに発出します。

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ロッキード(当時)P2V「ネプチューン」哨戒機(画像:アメリカ海軍)

 P2Vはアメリカ海軍やイギリス空軍、海上自衛隊などにも採用された傑作哨戒機でした。しかし、第2次世界大戦中の1945(昭和20)年5月に初飛行したP2Vには、それから10年以上が経過した当時、アメリカ海軍の最大の脅威であったソ連の潜水艦の能力が急速に向上していくなかで、それに対抗するための探知機材や武装の搭載が不可能になりつつありました。

 このためアメリカ海軍はP2Vを後継する哨戒機には、長い航続距離と高速飛行能力に加えて、将来の探知機材の追加搭載が可能で、長時間の哨戒飛行に乗員が耐えられる居住性を求めました。ロッキードはこの要求に対して、「エレクトラ」の設計を流用する哨戒機案を提案。アメリカ海軍はこの提案を高く評価して採用し、1958(昭和33)年にP-3Aとして導入することとなりました。

 P-3Aの大きな機内スペースは、その後の探知機材の追加に十分対応することが可能で、1965(昭和40)年からはエンジンを強化したP-3B、1969(昭和44)年からは潜水艦の発する音響信号を受信してそれを電波で送信する「ソノブイ」などの最新機材と、地上の司令部とリンクする機能を備えたP-3Cがそれぞれ就役し、P-3Cは現在も第一線で洋上哨戒機として運用され続けています。

【写真】P-3哨戒機の原型 LAドジャースが所有したL-188A「エレクトラ」 ほか

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コメント

1件のコメント

  1. 軍用機と旅客機の間は曖昧って話ですかね……。

    そういやB747は「輸送機の選定に落ちた。米軍許さん」が気がつけば輸送機の選定に該当するより遥かに多くのセールスを記録してますし、日本の航空会社大好きB767(多分TDA→JAS以外の全てのボーイング機運航会社が一度は使用しているはず)は早期警戒管制機のE-767や給油機KC-767にもなってますし。ってその2機種も空自が主要顧客ですか……。