21世紀に生き残った「巨大列車砲」の子孫 シベリア鉄道走る超重量列車は何を積んだ?

日本ではほとんどなじみのない「列車砲」なる兵器は、第2次世界大戦期、航空機の発達とともに世界中から姿を消しましたが、その子孫といえるものが21世紀のシベリア鉄道を走っていました。どんな兵器だったのでしょうか。

保線担当からは嫌われ者だった?

 ICBMを動き回らせて先制攻撃を逃れようというアイデアは、2020年現在、超大型トラックへ移動式発射機(TEL)を載せる方式で行われていますが、その車体は大柄であり、移動できる地域は、実は専用に整備された基地内に限られています。

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ランチャー車にキッチリと収められた大陸間弾道ミサイル(ICBM)「RT-23」(画像:ロシア国防省)。

 BZhRKもロシア中の鉄道網12万kmをどこでも走れるわけではありませんでした。ミサイル本体だけで重量が104tあり、ミサイルランチャーモジュール車は200t以上と大変重く、3両連結にして軸荷重を分散させています。荷重に耐えられるようにレールは最も重い重量に耐えられる規格、枕木は鉄筋コンクリート製、バラストも特に厚くする高規格軌道とする必要がありました。そのためBZhRKの運行区間は基地から1500km以内に指定された高規格軌道でしたが、つねに補強と補修が必要で、鉄道保線担当にとっては厄介者だったようです。

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立ち上がるミサイル発射筒が無ければ、外観は冷凍貨物列車に偽装してBZhRKとは気が付かない(画像:ロシア国防省)。

 BZhRKの任務期間は21日、巡航速度は80km/hから120km/hで移動距離は1200km。運行されていた当時、シベリア鉄道で旅行したら、行き交う列車の中に偽装した戦闘鉄道兵器が混じっていたかもしれません。観察眼に鋭い「レール鉄」の人なら、特定区間に突如出現する高規格軌道に気が付いていたでしょうか。

 BZhRKは2002(平成14)年に締結された戦略的攻撃能力の削減に関する条約「モスクワ条約」に基づき、2005(平成17)年に全て廃棄されて、いまは博物館の展示物になっています。

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2020年現在は博物館でランチャー車の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「RT-23」を発射態勢の姿で展示されている(画像:ロシア国防省)。

 2013(平成25)年、小型になった新型ICBM、RS-24「ヤルス」を装備する新BZhRK「バルグジン」が計画されました。貨物列車に偽装し1編成につき6発のRS-24を搭載することになっており、2020年には実戦配備する予定でしたが、財政事情の悪化から2017年12月に計画は凍結されたとロシア国営メディアが報じています。

 ドイツの80cm列車砲「グスタフ」「ドーラ」は、見た目にも究極の巨大兵器の迫力を感じますが、冷凍貨物列車に偽装して核ミサイルをしのばせるBZhRKには、列車砲の迫力とは違った感情を覚えます。

【了】

【写真】鉄道車両ではなくクルマに載せると…移動中の地上移動式ICBM発射機

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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