6段つづら折りスロープの異様 「またぐ道路がない巨大歩道橋」なぜできた 横浜の廃校裏

道路開通前だから味わえる? 歩道橋を吹き抜けるそよ風

 ひまわり歩道橋は、道路に先駆けて2007(平成19)年度から整備が進められ、約3年を経て暫定的に開通したものです。横浜市は、「野庭地区と日限山地区がバリアフリー対応の歩道で結ばれ、地区間の移動の利便性や安全性が向上されました」としています。

 道路予定地のそばには、はるばる江ノ島まで流れる境川水系の馬洗川(うまあらいがわ)が流れ、川沿いの遊歩道はトレッキングの定番コースとして人気を集めています。この周辺は横浜市の山間部によく見られる谷戸(やと。丘陵地を川が削ってできた深い谷)の地形で、野庭と日限山を隔てる高低差と谷は、道路工事の前から渓谷があった名残でもあるのです。

 昭和40年代、この地形を切り開き急速に開発された歩道橋の周辺地区は、半世紀を経て高齢化と若い世代の流出に悩まされています。旧野庭高校も、全盛期には1600人もの生徒数を擁していましたが、2003(平成16)年の再編統合によって30年弱の歴史に幕を閉じました。

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歩道橋から北の上永谷方面を望む。右手には馬洗川が流れる(2019年2月、宮武和多哉撮影)。

 大幅に部員が減少しながらも廃校前までコンクールで好成績を保ち続けていた同校の吹奏楽部。それを記憶にとどめている人々も多く、未だに30年以上前の音源を購入できるほどです。地元の方によると、往時の姿を残す旧校舎を訪問する人々をよく見かけるのだとか。

 ちなみに、ひまわり歩道橋の上からは、その校舎やグラウンドをよく見渡せます。もし高校が今もあったなら、吹奏楽部の練習の「音出し」がよく聴こえたことでしょう。英語で「Wind ensemble(ウィンドアンサンブル)」とも呼ばれる吹奏楽の響きを思い浮かべつつ、マーチのように軽やかなそよ風を受けながらのウォーキングを楽しめるのも、橋の下に道路が開通していない今のうちかもしれません。

【了】

【航空写真&地図】上から見た「ひまわり歩道橋」の異様

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 興味深く読ませていただきました。幹線になる道路計画は用地買収もあってなかなか進まないものですね。
    Google mapで確認したのですが、この歩道橋より旧野庭高校のグラウンド跡地と思われる敷地に建っている建物が気になりました。屋上にたくさんのパトカーが駐車(保管?)してあるこの建物は一体何でしょうか?