先進国だったはずなのに…WW2緒戦フランス戦車はドイツ戦車になぜ大敗北を喫した?

第1次世界大戦で、初めて旋回式の砲塔を搭載する「ルノー FT-17 軽戦車」を開発したフランス。第2次世界大戦でもスペック的にはドイツより優秀な戦車を数多く揃えていました。しかし結果は大敗北を喫します。問題は運用面にありました。

電撃戦の前に機動力不足を露見させトーチカになる戦車も

 この歩兵支援に固執した戦車ばかりという状態は、いわゆる電撃戦でアルデンヌを抜けてきたドイツ機甲師団を阻止するべく動くときに、さらに大きな問題になりました。重装甲にしすぎた影響で燃費が悪く、給油に手間取ってしまったのです。

 それはまとまった部隊行動をする場合に顕著で、広く知られるところでは、ドイツ軍のベルギー・シャルルロワ方面での第5、第7機甲師団のムーズ川渡河を阻止しようとしたフランス軍第1戦車師団が、約36kmの移動に16時間もかかったといわれています。もともと足の遅い戦車が多いとはいえ、なんと徒歩よりも遅い速度です。しかも、整備も不十分で戦場にたどり着く前に落伍する戦車も多かったといいます。

 また、電撃戦の要だったセダン方面のラインハルト装甲軍団相手でも、長大な戦線に散らばった戦車を上手く編成することができず、機動力で防御手薄な突出部の側面を突き、補給路を断つことができませんでした。

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ルノー B1 重戦車(柘植優介撮影)。

 これは、あまりに早いドイツの攻勢に、フランス軍司令部が混乱して命令を二転三転させた影響もありますが、フランス戦車がもともとマジノ線などと同じく、防衛戦で歩兵を支援することに比重を置きすぎたという面もあります。結局、かなりの数の戦車が戦線には投入されず、地中に埋められトーチカがわりにされます。

 残ったルノー D2、ルノー B1など、本来ならば圧倒的有利にドイツ戦車を相手にできる車両なども、戦場でまとまった数が揃わず、機動力の高いドイツ戦車部隊や、対戦車砲にも転用可能な8.8cm砲に各個、撃破されていくのです。

【写真】対するドイツの切札は…現存するIII号戦車

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