歩兵はライフル銃で戦車と戦えるの? 「対戦車ライフル」の歴史とその子孫
扱いに求められるメンタル要素
身を護るのは布の被服しかない歩兵にとって、小銃以上の対戦車火器を持っているという心理的安心感は無視できません。もっとも敵意を持って迫ってくる敵戦車を有効射程までじっと我慢して待ち伏せ、ペリスコープを狙うような精密照準をするには、かなりタフな精神力が必要でした。見つかれば集中射撃を受け、蹂躙されます。また対人狙撃にはスコープで見える、はっきり人間と分かる「標的」に対して、冷静に引き金を引けるという精神性も必要です。対戦車ライフルという兵器には、扱いにメンタル要素が大きく影響するのです。
戦後は対戦車戦闘よりも歩兵戦闘の火力支援に使われ、汎用性のある「対物ライフル」と呼ばれるようになりました。対物ライフルは21世紀に入ってからも進化して、航空機や砲兵の支援を受けられないような特殊作戦における火力支援で使われます。
その12.7mm弾の有効射程は対人目標で1000m、対物目標で2000mが目安とされるなか、2017年6月23日には、イラクでカナダ軍特殊部隊が3540mの距離でISILの戦闘員を狙撃し命中させたという記録もあります。
対物ライフルを対人狙撃に使うことについては、ハーグ陸戦条約で禁止されている「不必要な苦痛を与える兵器」に該当するという説もありますが、明確な条項もなく、いわゆるグレーゾーンといえそうです。
また現代戦車にとってもやはりいやらしい存在になりそうです。現代戦車は情報共有システムを装備しネットワーク無しには実力を発揮できません。いくつものセンサー、アンテナを外装しており、対物ライフルで狙撃しそれらを損傷させることで戦闘力を減殺させることは可能なのです。
最近では低高度を飛行するドローンの迎撃にも効果が認められており、一度は廃れかけた対戦車ライフルの子孫は、これからも使われ続けるようです。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
ソ連に侵攻されたアフガニスタンではゲリラが戦車の斜め後ろから近づいて戦車のキャタピラと駆動輪?との間に具合よく切り揃えた丸太を挟んで逃げたものですって。手持ちの近代兵器がほとんど無かったのでしかたありません。
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