燃料タンクで敵の弾を防ぐ…? 戦車や装甲車でそれが有効である納得の理由!

湿式弾薬庫 ただし湿らせるのは「燃料」

 ギリギリに「詰めた」設計と言えば、ソ連の戦車「T-55」も燃料タンクについてトンデモない使い方をしています。主砲弾の弾薬庫と燃料タンクを一体化し、燃料が砲弾を包み込むような構造になっているのです。二重に危険物をまとめるという、狂気の沙汰にも見えます。しかもこの弾薬燃料庫も車体前面に配置されています。

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ソ連のT-55戦車。戦後第1世代戦車の代表格で史上最も多く生産された戦車といわれる(画像:ポーランド国防省)。

 しかし、これも軽油の引火しにくい性質を応用したもので、車内に火災が発生しても砲弾の誘爆を防ごうという「湿式弾薬庫」となっているのです。誘爆防止、弾薬庫と燃料タンクの容量確保という一石三鳥のようなアイデアでした。

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T-55の燃料系統図。左側の1が車体前面装甲、直後の2が弾薬燃料庫。右端がエンジン(画像:ソ連軍「T-55取扱説明書」より)。

 ちなみに戦車の燃料タンクは、1か所だけでなくいくつかに分割されているので、ひとつの燃料タンクに被弾しても燃料がなくなって行動不能になるということはありません。BMP-1の後部ドア燃料タンクの容量は122リットルと全搭載量の4分の1です。長距離行動しないときには満タンにせず、軽油の代わりに水や砂を入れていることもあるようで、これでも防御効果は期待できます。そして、やはり乗員にしてみれば、燃料よりは安心感があるようです。

【了】

【画像】ホントにいちばん前 「メルカバ」の燃料タンク周辺断面図

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

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2件のコメント

  1. へー、M1エイブラムスってディーゼルエンジンにしたんかぁ(遠い目)

  2. M1と同世代の旧ソ連のT80系もガスタービン。まだ現役の国もたくさん
    M1は軽油も使えなくはないらしいけど普通ガスタービンはジェット燃料(ほぼ灯油)
    灯油がガソリンよりは引火の危険がマシのは同じではあるけど。