電車走らず「電鉄」名乗った私鉄 いったいナゼ? しかも最後の1年だけ

かつて福島県で運行された鉄道に「磐梯急行電鉄」があります。しかし廃線まで一度も電車が運行されたことはありません。もともと貨物輸送を主体とした非電化の軽便鉄道が、なぜ「電鉄」を名乗ったのでしょうか。

貨物輸送から旅客輸送に転換を図るも…

 鉄道会社の社名が「〇〇電鉄」などの場合、ほぼ全ての会社は電気を動力にする電車を運行しています。ディーゼルカーなどのみを運行している場合は、一般的に「〇〇鉄道」と名乗ります。

 しかし過去には、一度も電車を走らせたことがないにもかかわらず「電鉄」を名乗った会社がありました。福島県の中央部、猪苗代町で鉄道を運行した「磐梯急行電鉄」もそのひとつです。列車は客車を蒸気機関車などが牽引するスタイル。一部はガソリンカーも使われました。ではなぜ「電鉄」を名乗ったのでしょうか。

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猪苗代町が運営するテーマパーク「猪苗代緑の村」に静態保存されている、沼尻鉄道の車両(画像:photolibrary)。

 同社の歴史において「電鉄」を名乗ったのは最後の1年ほどでした。それまでは「日本硫黄沼尻鉄道部」や「日本硫黄観光」などを商号としていましたが、一般的には「沼尻鉄道」と呼ばれていたようです。

 JR磐越西線の川桁駅から沼尻駅までを結んでいた同路線は、もともと沼尻鉱山の硫黄を運搬するために1913(大正2)年、運行開始しました。貨物輸送を主力とするも戦後、硫黄需要の低下や鉱山の閉鎖で経営は悪化。会社は沿線への湯治客やスキー客を呼び込もうと旅客輸送に注力します。

 JR線よりも一回り小さい軽便鉄道(軌間762mm)の小さな客車は、「豆汽車」や「マッチ箱」とも呼ばれ、一時は観光客でにぎわったといいます。しかし経営は振るわず1968(昭和43)年に会社は倒産。「磐梯急行電鉄」の名は、いつの日か磐越西線と直通できるようレール幅を拡げて電化し、利便性を高めて観光輸送に活路を見出そうとした経営陣の思惑ゆえに名付けられたものでした。

 この路線がモデルになったとされる著名な歌謡曲が『高原列車は行く』です。2020年に放送されたNHK朝の連続テレビ小説『エール』で主人公のモデルとなった作曲家、古関裕而の代表作で、作詞を担当した丘 灯至夫は生前、この詩について「少年時代に家族で温泉に向かう際に乗車した沼尻鉄道を想起して書いた」と語っています。しかしながら作曲した古関は「アルプスの高原鉄道を思い浮かべた」そうです。もし磐梯急行電鉄の名の通り電車が走っていたら、また違った歌詞とメロディになっていたでしょうか。

 なお、磐梯急行電鉄が接続していたJR磐越西線の川桁駅前には現在、沼尻軽便鉄道記念碑があります。ほかにも沿線の駅跡には、駅名標を模したレプリカが設置されています。

 ちなみに、電鉄を名乗りながら電車運行が実現しなかった路線はほかに、長野県の善光寺白馬電鉄などがあります。

【了】

【写真】現役時代の磐梯急行電鉄(沼尻鉄道)

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コメント

4件のコメント

  1. Wikipedia の磐梯急行電鉄と紀州鉄道の項を併せて読むとさらに面白いんですよね…

  2. ありがとうございます。かつてTV番組であった『トリビアの泉』ではありませんが、まさに「へぇ〜、へぇ〜…」ですね。

  3. 栗原電鉄が非電化になってもくりはら田園鉄道と改称して「くりでん」を守ったのは上手いと思った。

  4. 電化や改軌は実現しませんでした。

    そんなの最初から見果てぬ夢だったんですよ。

    もし電化が実現していたら、日本初の交流電化私鉄として注目されたことでしょう。

    ただ、近代化には其れなりに努力はしていて、同じく軽便だった仙北鉄道から中古の気動車を2両購入していたようです。

    その投資が裏目に出たのか、その1年後に廃止されました。

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