自然災害からの鉄道復旧に高い「壁」 補助制度の実態 公費で早く復旧する道路との違い
「社会インフラ」としての位置付けを確固たるものへ
JR九州は肥薩線が被災する以前の2017年7月にも、集中豪雨により日田彦山線の添田~夜明間の63か所が被災しました。これだけ被害が甚大になれば、復旧にかかる費用は新規に鉄道を建設するほどのインパクトになります。JR九州は鉄道による復旧を断念し、BRT化することを決定しました。
日本では、鉄道を含めた公共交通は独立採算制を原則としています。しかし、例えば道路が自然災害で崩落すれば、すぐに公費で復旧されます。大規模災害による被害に関しては、先述の補助金制度を拡充する形で、黒字の事業者であっても財源があてがわれればと筆者(堀内重人:運輸評論家)は考えます。
欧米などの諸外国では、独立採算で公共交通が維持できない環境もあることが影響します。運賃に関しても、「採算性」ではなく政策的に決定されます。それゆえ「公共交通は税金で支えるものである」という考え方が定着しています。狭い国土に多くの人が住む日本では、独立採算で公共交通を維持できたため、公共交通は「営利事業」と認識されてきました。
しかし人口減少社会に直面し、相次ぐ自然災害に加えコロナ禍が追い打ちをかけ、地方の衰退はますます顕著です。鉄道事業者の自助努力に依存した経営は、限界を迎えようとしています。
【了】
Writer: 堀内重人(運輸評論家)
運輸評論家として、執筆活動や講演活動、テレビ出演なども行う。主要著書に『寝台列車再生論』(戎光祥出版)、『地域の足を支えるコミュニティーバス・デマンド交通』(鹿島出版会)、『観光列車が旅を変えた』(交通新聞社)など多数。日本交通学会、公益事業学会、日本海運経済学会、交通権学会会員。
線路も公費で維持運営にすればいいのに。併用軌道でもいいんだし。
併用軌道は『列車のスピードを遅くしないといけない』、『自動車交通の障害となりかねない』という大きな欠点があります。
(なぜ、路面電車が『目の敵』にされ廃止に向かったのかを考えれば分かりやすい)
線路も『公費で』運営維持というよりは、『国が統一的社会福祉インフラの一部とみて』運営維持に積極的に関わる形に持って行くべきではないかなと思う。
(国が線路維持のための『100%株主』の会社を作り、JR・私鉄・三セク関係なく『全ての路線の保有権』を持ち、経営は今まで通りそれぞれの『運行会社』に任せる)
JRの線路はすべて上下分離でいいと思います
経営はJRにまかせ線路維持は自治体が行えば無駄が少なくなると思うので
>経営はJRにまかせ線路維持は自治体が行えば無駄が少なくなると思うので
三セクの事例を考えると、これはこれで『都道府県体力の差から境を越えると線路の状況が変ってしまう』という運行上の大問題になりかねない気がする。
どちらかと言えば、線路維持に関しては『国の仕事』とすべきじゃないかな。
大船渡線の一部BRT化に触れてありましたが、もとから津波をかぶりにくい反面トンネルや盛り土で既存集落を比較的にスルーしてきた三陸鉄道と違って、高台移転も必要だっただろうから鉄道での復旧は難しかったのですかね。
輸送量がわりとある仙石線や常磐線の高台へのリルートは自費だったんですよね?
>公共交通は「営利事業」と認識
この世間一般の認識を、多大な困難を乗り越えてでも改めない限り、災害の度に地方の鉄道は淘汰され続けるかと。あくまでも世間では
「鉄道は営利企業の私有財産(公営民営問わず)。公費による復旧は銀行救済と同じ悪手」
でしょうから。