自然災害からの鉄道復旧に高い「壁」 補助制度の実態 公費で早く復旧する道路との違い

運命が分かれたJR九州とくま川鉄道

 その後の2013(平成25)年に「交通政策基本法」が成立。公共交通を重視する姿勢が鮮明となりました。そして2017年には「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助金」という制度が設けられました。この制度は、国と地方自治体双方からの補助を1/2ずつ受けられるもので、鉄道事業者の負担が事実上無くなったのです。

 この制度が確立した後の2020年7月、集中豪雨により熊本県を流れる球磨川が氾濫。JR九州の肥薩線だけでなく、第三セクター鉄道のくま川鉄道も、全線で運転を見合わせる被害が発生します。くま川鉄道は特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助金を適用して復旧させることになりました。

 しかしこの制度が適用されるには、様々な条件をクリアする必要があります。例えば災害の出た鉄道事業者が、過去3年間の経営が赤字であり、かつ当該路線の年間収入以上の損害を出していることなどです。

 するとJR九州は、鉄道事業が赤字であっても、不動産事業の利益で鉄道事業の損失を内部補助できることから、肥薩線が被災したとはいえ特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助金は適用されません。なお、これがJR北海道の路線ならば、JR北海道は完全に赤字経営であることから同制度は適用されるでしょう。くま川鉄道は熊本県と関係する10の市町村で、「くま川鉄道再生協議会」を創設、施設を公的主体が保有する上下分離方式を導入するなどの復旧計画をまとめています。

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コメント

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6件のコメント

  1. 線路も公費で維持運営にすればいいのに。併用軌道でもいいんだし。

    • 併用軌道は『列車のスピードを遅くしないといけない』、『自動車交通の障害となりかねない』という大きな欠点があります。
      (なぜ、路面電車が『目の敵』にされ廃止に向かったのかを考えれば分かりやすい)
      線路も『公費で』運営維持というよりは、『国が統一的社会福祉インフラの一部とみて』運営維持に積極的に関わる形に持って行くべきではないかなと思う。
      (国が線路維持のための『100%株主』の会社を作り、JR・私鉄・三セク関係なく『全ての路線の保有権』を持ち、経営は今まで通りそれぞれの『運行会社』に任せる)

  2. JRの線路はすべて上下分離でいいと思います
    経営はJRにまかせ線路維持は自治体が行えば無駄が少なくなると思うので

    • >経営はJRにまかせ線路維持は自治体が行えば無駄が少なくなると思うので

      三セクの事例を考えると、これはこれで『都道府県体力の差から境を越えると線路の状況が変ってしまう』という運行上の大問題になりかねない気がする。
      どちらかと言えば、線路維持に関しては『国の仕事』とすべきじゃないかな。

  3. 大船渡線の一部BRT化に触れてありましたが、もとから津波をかぶりにくい反面トンネルや盛り土で既存集落を比較的にスルーしてきた三陸鉄道と違って、高台移転も必要だっただろうから鉄道での復旧は難しかったのですかね。
     輸送量がわりとある仙石線や常磐線の高台へのリルートは自費だったんですよね?

  4. >公共交通は「営利事業」と認識
    この世間一般の認識を、多大な困難を乗り越えてでも改めない限り、災害の度に地方の鉄道は淘汰され続けるかと。あくまでも世間では
    「鉄道は営利企業の私有財産(公営民営問わず)。公費による復旧は銀行救済と同じ悪手」
    でしょうから。