戦車の歴史は帽子の歴史? 戦車乗りなら絶対に必要な「戦車帽」とは 被らなきゃ死ぬ!?

試行錯誤が続いたイギリス戦車帽

 このような事態を防ぐ手段としては、ヘルメットや保護帽を着用するのがベストなのはいうまでもありません。そのため、自国で戦車を開発し装備できる国では、ほぼ同時に「頭部を保護するための戦車用帽子」が生み出され、用いられるようになりました。

 ただ、歩兵などが地上戦で用いる、いわゆるスチールヘルメット(鉄帽)を戦車内で被るのには問題がありました。なぜなら、このようなヘルメットはおもに銃弾や砲弾の弾片から頭部を保護するためのもので、屋外使用を前提としているので大きいうえに重く、加えて保護範囲を広くするべく縁につばなどが付いているなどで、狭い戦車内で被るにはかさばり過ぎるものだったのです。

 戦車内で用いる保護帽は、耐弾性よりも出っ張りが少なく、軽くて衝撃吸収性に優れている方が重要だと判明したことから、各国とも戦車乗員用の専用ヘルメットを発案します。

Large 210806 tank 02

拡大画像

第2次世界大戦初頭、イギリス本土で訓練中のイギリス軍戦車兵(画像:イギリス戦争博物館/IWM)

 戦車発祥の国イギリスでは、頭頂部が厚紙またはベークライトで造られ、前面に分厚いクッションが張られた、飛行帽のような耳をカバーするヘッドホン付き幅広のストラップを備えた車両乗員用保護帽を開発しました。

 とはいえ、被りにくかったことから乗員らには不評で、第2次世界大戦中盤以降、イギリスの戦車乗員はもっぱらベレー帽をかぶり、最前線などでどうしても保護帽を被る必要がある場合については、つばなどの出っ張りがほぼない落下傘兵士(パラトルーパー)用のスチールヘルメットを被っていました。

 ゆえにイギリス軍では、大戦中期以降には落下傘兵士用スチールヘルメットから派生した新しい車両乗員用保護帽が誕生し、旧型に代わって多用されています。

 ドイツでは、頭部を保護するためラバースポンジで作られた内帽の外側を、黒い布で覆った「シュッツ・ミッツェ」と呼ばれる保護帽が用いられました。これは一見すると大きなベレー帽のように見えるものでしたが、その形状から通信用ヘッドホンの装着に邪魔だったこともあって、実戦では第2次世界大戦初頭にしか用いられず、戦車に無線機器が標準で備えられるようになると姿を消しました。

【写真】ドイツ戦車兵が被るベレー帽のお化け「シュッツ・ミッツェ」ほか

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。