戦車の歴史は帽子の歴史? 戦車乗りなら絶対に必要な「戦車帽」とは 被らなきゃ死ぬ!?
世界中で使われたアメリカ製戦車帽
一方、アメリカではベークライトや厚紙を加工して作った硬い外装の内側にクッションを貼り込み、左右の耳の部分にはヘッドホン・スペースも組み込まれた戦車兵用保護帽「タンカース・ヘルメット」が生み出されました。
これはゴーグルのストラップを通すガイドもあらかじめ備えられており、非常に使い勝手に優れていたことから、第2次世界大戦後も世界中で重用されたほか、その後の戦車兵用ヘルメットの開発にも大きな影響を与えた「傑作」でした。
ソ連(現ロシア)は、飛行士(パイロット)が被る、いわゆる飛行帽のような外見の帽子を用いていました。布素材の帽体に、布や革で作ったクッションを外部の必要個所に装着しているのが特徴でした。
なお、いずれの国も各ハッチなどから頭を出したり、または下車して車外活動したりする際には、一般兵科用のスチールヘルメットを被ることが多かったようです。
このようにして各国で生まれた戦車用ヘルメットも、第2次世界大戦を経て、さらにその後の戦争で様々な戦訓を得た一方、素材技術や車内通話機器などの発達などもあり、大きく進化を遂げて行くことになります。
ところで、とある戦車道を描いたアニメ作品に登場する女子部員たちはほとんど戦車兵用保護帽を被っていないのですが、あのアクロバティックな走行事情に被弾状況のなか、頭は大丈夫なのでしょうか。もしかしたら、ひと試合終わるたびに、皆が頭コブだらけ傷だらけで、部員同士がお互いに泣いたり笑ったりしながら、薬つけあったり包帯巻きあったりを、映っていないところで行っているのかもしれませんね。
【了】
※誤字を修正しました(8月9日7時00分)。
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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