いつの間にか“人流抑制”になった首都高1000円増し再び 「ETCなら簡単にできる」の誤解
で、料金上乗せは感染拡大防止に役立つのか?
今回の1000円上乗せは、東京オリ・パラ組織委員会と東京都の大会関係者や選手団の移動が渋滞に巻き込まれないため対策を講じてほしいという要請に、国土交通省と高速道路会社が応じたもの。料金制度を抜本的に変えるものではないために、ナンバー読み取り装置の助けが必要になったというわけです。しかし、ナンバー読み取り装置の本来の設置目的は、主として不正利用の防止にあります。
赤羽一嘉国土交通相も、こう話します。
「ロードプライシング事業の実証実験みたいな意識というよりも、要請を受けて、そのまま対応したということに尽きる。複雑なロードプライシングを行って、都内全体の渋滞をどう緩和するのかといったものとは少し違う」(7月30日・閣議後会見)
通常料金より上乗せすることで、高速道路の利用者が減少することは否定できません。実際にオリンピック期間を中心とした1000円上乗せでは、首都高の渋滞が最大96%減少したと警視庁も発表しています。しかし、それが効果的な人流抑制の施策につながっているのか。赤羽氏はこう語ります。
「大会が終わって落ち着いた段階で、実施したことがどう道路の渋滞状況や人の流れに影響したのか、分析しなくてはいけない」
高速道路は建設と維持のコストが通行料金で返済され続けている有料道路です。ロードプライシングはそのコストを負担する利用車の渋滞緩和と環境負荷低減を目的とするもので、利用を減らして人流抑制するための値上げをすることは、同じ行為でも意味がまったく違います。それぞれの目的に応じた冷静な議論が必要ではないでしょうか。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
システムに合わせて巻き添えありきの制度を作れば良い
役所は厳密な公平性を求めすぎ