日本の「ごうりゅう」プロジェクトとオーストラリア原潜騒動…どうしてこうなった?

「ごうりゅう」でもキャンセルされていた? 切実な国内事情

 このオーストラリアの工業力に関する問題は、実は冒頭でふれた日本の「ごうりゅう」プロジェクトでもハードルとなりました。

 潜水艦の船体には高張力鋼が使われます。そうりゅう型に使用されているのは最新のNS110鋼と呼ばれるもので、数字の「110」は保証耐久値(kgf/mm2、キログラム重毎平方ミリメートル)を表し、大雑把にいうとNS110鋼は1平方ミリメートルあたり110kgまでの引っ張りに耐えられるということです。そしてこのNS110鋼が可能にするそうりゅう型の作戦可能深度は、約600mといわれます。

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呉に停泊する日本のそうりゅう型潜水艦(2019年12月18日、月刊PANZER編集部撮影)。

 NS110鋼は溶接などの加工が難しく、オーストラリアでは製造や加工ができません。スペックダウンしたNS80鋼に変更すると作戦可能深度は約300mとなり、ノックダウン建造した「ごうりゅう」はオリジナルそうりゅう型より性能が劣るものにならざるを得ません。

 今回、オーストラリアは原潜という選択をしましたが、同国は有数の天然ウラン産出国でありながら、一方で商業用原子力発電所を法律で禁止しています。つまり、原子力産業が未成熟のオーストラリアは今回のプロジェクトにおける潜水艦の国産化を諦めなければならず、工業力を理由として通常型潜水艦の国産化を断念するよりは国内を納得させやすいとオーストラリア政府が考えたのではないか、とも思案されます。

【画像】名前まで決めていたのに…キャンセルされたアタック級潜水艦

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コメント

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1件のコメント

  1. オーストラリアの潜水艦計画は2040年代や50年代などの数字が出てきて先が見えないです(T_T)
    オーストラリアが原潜導入に本気ならつなぎの潜水艦はロサンゼルス級の程度の良い物をリースするのが良いのではないでしょうか(?_?)2040年まで借りては返しの自転車操業ですが(;o;)