実は日本の外交的勝利!? 史上初の軍縮条約「ワシントン海軍軍縮条約」で得た“実利”
日本にとってメリット多し 旧式戦艦の廃棄
一方、これら最新鋭戦艦の就役を認める代償として、日本、イギリス、アメリカの3国は旧式戦艦の破棄が求められました。
日本が破棄した戦艦「摂津」は30.5cm砲を搭載、速力20ノット(約37km/h)という性能だったのに対し、イギリスが破棄した戦艦4隻は34.3cm砲、21ノット(約38.9km/h)。アメリカが破棄した2隻は30.5cm砲、21ノット(約38.9km/h)でした。
このように見てみると、条約締結で最も利益を被ったのは、日本と言えるのではないでしょうか。当時主力だった長門型、扶桑型、伊勢型、金剛型に対して、「摂津」の性能は著しく劣っていたからです。仮に「摂津」を戦艦として保有し続けたとしても、その後起きた太平洋戦争で活躍の場面はなかったでしょう。
日本は「陸奥」保有の代わりに、英米に最強の40.6cm砲戦艦保有を認めても、その保有比率は日本とイギリスが2隻、アメリカが3隻です。対英米6割の保有比率を考えるのであれば、40.6cm砲搭載戦艦の保有比率では、対イギリスで10割、対アメリカでも6割6分となり、実質的な艦隊戦力は大幅に強化されたと言えるのではないでしょうか。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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