「いかめし」ついに丼になる 発売80年 不動のNo.1駅弁を守る3代目の挑戦

コメ不足から始まった「いかめし」駅弁大会から全国区へ

 現在の函館本線 森駅の開業(1903年)とともに営業を開始した阿部商店が「いかめし」を発売したのは、第二次世界大戦中のこと。食料不足が深刻になる中、駅の目の前に広がる内浦湾で多量に獲れるスルメイカに米を入れて煮ることで、当時勧められていた“節米”(コメを節約する運動)にもなり、かつ腹持ちもよい一品として評判を呼んだといいます。なお同じように内浦湾に近い函館本線 長万部駅でも、米不足で弁当などが作れなくなったという事情から、茹で蟹1パイ丸ごとの販売をはじめ、後の「かにめし」開発につながっています。

「いかめし」は戦後も長らく森駅のホームで販売され、繁忙期にはホームに多くの売り子が立ち、地元高校生の格好のアルバイト先ともなっていたそうです。しかしに急行列車が停車しなくなると駅での売り上げは激減。販売の中心は、徐々に全国での催事や駅弁大会に移り、京王百貨店での実績もあって出店の要請は激増していきます。9月から翌年春にかけての催事シーズンは、多い時で10チームほどに分かれて全国のデパート・イベントなどへ飛び回っていたそうです。

 それは今も変わらず、阿部商店の売り上げのほとんどは催事での実演販売によるものです。同社のウェブサイトには京王百貨店のあとも、阪神百貨店梅田店、鶴屋熊本店など10か所ものスケジュールが掲載されています。毎年出店する場所も多く、楽しみにされているファンの方が各地で根付いていることが伺えます。

Large 220107 ika 02

拡大画像

“森のいかめし”といえばこのパッケージ(宮武和多哉撮影)。

 そうしたなか、同社の近年の悩みどころが、原材料となるスルメイカの不漁。国内の漁獲高が減少した後は、煮込んだ後も味の柔らかさを保てるニュージーランド産に変更していましたが、2011(平成23)年に同国で発生したカンタベリー地震後はこちらも不漁が続き、現在はアルゼンチンなど広い地域で調達先を確保しているのだとか。そのため価格は2014年に580円から650円、2017年に780円と上げせざるを得なくなり、2021年には大口の物流ルートを持つ水産会社と提携することで、「いかめし」の原材料調達につなげています。

【写真】TVキャスターも務めたいかめし阿部商店3代目・今井麻椰社長

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

4件のコメント

  1. 多分、失敗する。最初は「森のいかめし」ブランドで売れるだろう。だが、リピーターは皆無。一回りしたら売れなくなると思う。いかめしが駅弁大会で不動のトップなのは安いから。そりゃ美味しいと言うのが大前提だが、それはどこの駅弁にも言える。他との違いは圧倒的な価格差ですよ。仮にいかめしが他の駅弁と同じ1500円以上もしたら、トップの座は維持できていないだろう。
    で、今回の新製品。1800円ですか?
    一食1800円って普通に考えれば高い食事ですよ。駅弁と言うだけで付加価値が付くのだろうけど、他の駅弁と比べても割高です。おそらく2、3年で消えるでしょう。

  2. 丼は、イベント用にあえて攻めて作ったと思うのですが、今度普通のいかめしにチーズオンしてみようかと・・・
    オリジナルの丼付いて1800円なら妥当な所だと思いますね。
    流石に定番にはならないと思いますが、こういうチャレンジは
    ありだと思います。

  3. ベースのイカめしは続けるとして、
    こういう感じで試行錯誤しながら、老舗として続けていって欲しい。

  4. 特急北斗のデッキから身を乗り出して探しましたが森駅のプラットフォームに立ち売りの姿は見いだせませんでした。なるほどこれが幻の駅弁たる所以かと…峠の釜めしは北陸新幹線の車内(それとドライブインや高速道SA)で買えたこともあったのですが。

    この丼ものも鉄道の駅では決してお目にかかれないものなのでしょう。