「いかめし」ついに丼になる 発売80年 不動のNo.1駅弁を守る3代目の挑戦

子供の頃から「いかめし」一筋!3代目社長が変えるもの、守るもの

 そして2020年5月、いかめし阿部商店の3代目として、現在の今井麻椰社長へのトップ交代が行われました。今井社長は小学生の頃からいかめしのホーム立売りに携わり、就任前にもアメリカでの実演販売で、いかめしへの馴染みがないLA、ニュージャージー、サンノゼなどを回ったという貴重な体験をしています。また就任前にはTVキャスターなどの経験もあり、今もプロバスケットボールBリーグの配信「バスケットLIVE」のリポーターを社長業と兼任するなど、「魅力を伝える」ことにとても長けている方です。

 しかし社長交代までの数年の間は、先述した食材のコスト高や職人の高齢化が進むなど、会社としてはとても厳しい状態にあり、現社長の父で先代の今井俊治社長の時代には、会社を手放す選択肢もあったそうです。駅弁業界そのものも業者の数が減り続け、同じ北海道では、百貨店での出店も多かった名寄駅弁・角館商会が2009(平成21)年に廃業するなど、家族経営の代替わりの難しさも各地で浮き彫りとなっていました。

 その中で「自分が引き継ぐ」との強い要望もあって発足した麻椰社長の新体制でしたが、そのタイミングは折悪く、7週間にも及ぶ緊急事態宣言が発令されていた最中のこと。駅に人影はまばらで、各社横断で行われていた駅弁誕生135周年記念のキャンペーンで限定発売していた同社の新商品の売れ行きも、期待していたものと大きく違ったといいます。その中でも今井社長は「既に決まっていることだったので、もうやるしかない」と決意を新たに、経営者としての世界に飛び込んたといいます。

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実演ブースに貼られているポスター(宮武和多哉撮影)。

 その後もコロナ禍は収束することなく、デパートでの催事も次々と中止に。開催された催事も以前のような活気はなく、2022年1月現在でも、全盛期の半分にあたる5チームほど全国を回れる程度にしか売上も回復していないのだとか。

 その中でも麻椰社長は、この1年で函館空港の空弁、もうひとつの顔であるレポーターとしてのつながりからBリーグ試合会場でのいかめし販売、いかめしのおかき・ポテトチップス展開など、これまでにとどまらないルートを開拓し続けています。

【写真】TVキャスターも務めたいかめし阿部商店3代目・今井麻椰社長

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コメント

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4件のコメント

  1. 多分、失敗する。最初は「森のいかめし」ブランドで売れるだろう。だが、リピーターは皆無。一回りしたら売れなくなると思う。いかめしが駅弁大会で不動のトップなのは安いから。そりゃ美味しいと言うのが大前提だが、それはどこの駅弁にも言える。他との違いは圧倒的な価格差ですよ。仮にいかめしが他の駅弁と同じ1500円以上もしたら、トップの座は維持できていないだろう。
    で、今回の新製品。1800円ですか?
    一食1800円って普通に考えれば高い食事ですよ。駅弁と言うだけで付加価値が付くのだろうけど、他の駅弁と比べても割高です。おそらく2、3年で消えるでしょう。

  2. 丼は、イベント用にあえて攻めて作ったと思うのですが、今度普通のいかめしにチーズオンしてみようかと・・・
    オリジナルの丼付いて1800円なら妥当な所だと思いますね。
    流石に定番にはならないと思いますが、こういうチャレンジは
    ありだと思います。

  3. ベースのイカめしは続けるとして、
    こういう感じで試行錯誤しながら、老舗として続けていって欲しい。

  4. 特急北斗のデッキから身を乗り出して探しましたが森駅のプラットフォームに立ち売りの姿は見いだせませんでした。なるほどこれが幻の駅弁たる所以かと…峠の釜めしは北陸新幹線の車内(それとドライブインや高速道SA)で買えたこともあったのですが。

    この丼ものも鉄道の駅では決してお目にかかれないものなのでしょう。