潜水艦にトナカイ乗務…なぜ? 英潜水艦艦長を悩ませた「ジョークか外交儀礼か」問題

ただでさえ狭い艦内で人間の食事の味を覚えて…

 ポリアンナの艦内におけるエサは、トナカイが好むハナゴケがソ連海軍から供与されていたものの、十分な量ではありませんでした。まさかハナゴケの補給に帰港するわけにもいきませんので、ポリアンナには乗組員の食事の残りが与えられていました。しかし、満足しなかったのかゴミ箱を漁り、海図を食べてしまったこともありました。そうしてすっかり人間の食事の味を覚えたポリアンナの一番の好物は、コンデンスミルクだったそうです。

 哨戒任務を終えてイギリスに帰港した際には、コンデンスミルクのおかげかポリアンナはすっかり太ってしまい、退艦するのにクレーンと食料用搬入具が使われました。この作業を行ったのは食肉業者だったといわれます。こうして潜水艦乗りトナカイの任務は終わりました。

 イギリス上陸後、ポリアンナはスレイデン艦長夫人の乳母車をひくことはなく、動物園に引き取られます。艦内訓練の成果か、動物園でもスピーカーからの声やサイレンに反応して伏せる行動をとったそうです。

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1945年6月にインドネシアで日本陸軍の大発動艇を撃沈した際に捕獲した日章旗を手にする「トライデント」の乗組員(画像:帝国戦争博物館/IWM)。

「トライデント」はその後、地中海で短期間活動し、やがて太平洋に出動します。1943(昭和18)年8月29日には、インドネシアのサバン港付近で日本海軍の練習巡洋艦「香椎」を雷撃しますが、命中弾は得られませんでした。1945(昭和20)年6月19日にインドネシアのバトゥ諸島海域で、日本陸軍の大発動艇を艦載砲で撃沈したのが最後の戦果となりました。

 北海から地中海、太平洋と戦歴を重ねた「トライデント」は戦争を生き延びました。1946(昭和21)年2月17日に除籍となりますが、「ポリアンナ」も同じ1946年に死んでいます。

【了】

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Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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